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能力不足や勤務成績不良等の理由による不当解雇(違法な解雇)

2024 12/03
労働問題 労働契約終了に関する問題(辞職、退職勧奨、解雇、整理解雇等)
2024年12月3日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

第1 能力不足や勤務成績不良等の理由による解雇

 会社は、就業規則に、解雇できる事情として、「業務能力が著しく劣り、または勤務成績が著しく不良のとき」等の条項を定めていることがあります。そして、会社は、このような条項に基づいて、「仕事ができないからクビ(解雇)である。」等と言って、労働者を解雇することがあります。

 それでは、能力不足や勤務成績不良等を理由として解雇された場合、労働者は、解雇を争うことができるのでしょうか。

 この点、労働契約法は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています(労働契約法16条)。

 したがって、「仕事ができない」等の能力不足や勤務成績不良等を理由とした解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は」、無効です。

 ですので、能力不足や勤務成績不良等を理由に解雇された労働者が不当解雇(違法な解雇)の効力を争う場合は、①客観的合理性と②社会的相当性を欠いていることを主張していくことになります。

第2 客観的合理性とは?

 「客観的に合理的な理由」(客観的合理性)とは、労働者の労働能力の欠如等、解雇の理由として合理的と考えられる事情が存在することです[i]。

 したがって、労働者の能力不足等の解雇の理由が実際は存在しない場合は、客観的合理性を欠き、解雇は無効です。

第3 社会的相当性とは?

 「社会通念上相当」(社会的相当性)とは、労働者の労働能力の欠如等の事情の内容・程度、労働者の情状、不当な動機や目的の有無等、解雇に関する諸事情を総合的に勘案して、労働者の雇用の喪失という不利益に相応する事情が存在していることをいうものと考えられます[ii]。

 したがって、仮に労働者の能力不足等の解雇の理由として合理的と考えられる事情が存在するとしても、その事情の内容・程度や、不当な動機や目的の有無等の諸事情を総合的に勘案して、労働者の雇用の喪失という不利益に相応する事情が存在しない場合は、社会的相当性を欠き、解雇は無効です。

第4 解雇の効力が争われた具体的な事案

 以下では、解雇の効力が争われた具体的な事案をいくつかご紹介いたします。

1 セガ・エンタープライゼス事件・平成11年10月15日東京地方裁判所決定(地位保全等仮処分命令申立事件)

 セガ・エンタープライゼス事件は、労働者に特定の業務のない勤務を命じ、退職勧告に応じないため、会社が、労働者に対して、就業規則の「労働能率が劣り、向上の見込みがないと認めたとき」に当たるとして行った解雇が、無効とされた事案です。

 セガ・エンタープライゼス事件決定では、以下のように述べられています。

① 「就業規則19条1項各号に規定する解雇事由をみると、「精神又は身体の障害により業務に堪えないとき」、「会社の経営上やむを得ない事由があるとき」など極めて限定的な場合に限られており、そのことからすれば、2号についても、右の事由に匹敵するような場合に限って解雇が有効となると解するのが相当であり、2号に該当するといえるためには、平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないというべきである。」

② 「債権者(注:労働者)について、検討するに、確かに(略)、平均的な水準に達しているとはいえないし、債務者(注:会社)の従業員の中で下位10パーセント未満の考課順位ではある。しかし、(略)人事考課は、相対評価であって、絶対評価ではないことからすると、そのことから直ちに労働能率が著しく劣り、向上の見込みがないとまでいうことはできない。」

③ 「就業規則19条1項2号にいう「労働能率が劣り、向上の見込みがない」というのは、右のような相対評価を前提とするものと解するのは相当でない。(略)他の解雇事由との比較においても、右解雇事由は、極めて限定的に解されなければならないのであって、常に相対的に考課順位の低い者の解雇を許容するものと解することはできないからである。」

④ 「債務者(注:会社)としては、債権者(注:労働者)に対し、さらに体系的な教育、指導を実施することによって、その労働能率の向上を図る余地もあるというべきであり(略)、いまだ「労働能率が劣り、向上の見込みがない」ときに該当するとはいえない。」

2 エース損害保険事件・平成13年8月10日東京地方裁判所決定(地位保全等仮処分申立事件)

 エース損害保険事件決定では、以下のように述べられ、結論としては、解雇が無効と判断されています。

① 「就業規則上の普通解雇事由がある場合でも、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情の下において、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当として是認できない場合は、当該解雇の意思表示は権利の濫用として無効となる。特に、長期雇用システム下で定年まで勤務を続けていくことを前提として長期にわたり勤続してきた正規従業員を勤務成績・勤務態度の不良を理由として解雇する場合は、労働者に不利益が大きいこと、それまで長期間勤務を継続してきたという実績に照らして、それが単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じ又は重大な損害を生じる恐れがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていることを要し、かつ、その他、是正のため注意し反省を促したにもかかわらず、改善されないなど今後の改善の見込みもないこと、使用者の不当な人事により労働者の反発を招いたなどの労働者に宥恕すべき事情がないこと、配転や降格ができない企業事情があることなども考慮して濫用の有無を判断すべきである。」

3 日本ヒューレット・パッカード事件・平成25年3月21日東京高等裁判所判決労働判例1079号148頁(地位確認等請求控訴事件)

 日本ヒューレット・パッカード事件では、以下のように述べられ、解雇が有効と判断されています。

① 「控訴人(注:労働者)は、平成18年8月ころから平成21年6月の本件解雇に至るまで、それぞれの時期における担当業務の遂行能力が不十分であった上、上司から業務命令を受けたり、上司や同僚らから指摘や提案などを受けてたりしても、自らの意見に固執してこれらを聞き入れない態度が顕著であったと認められる」

② 「控訴人(注:労働者)のこのような態度は、FRUリストに係るクレームへの対応のように、取引先からクレームが寄せられた場合であっても異なるところはなく、それが原因で取引先から担当者としての控訴人(注:労働者)の交代を含む改善を求められることとなった上、Q社訪問の件に至っては、そもそも会社内部で対処すべき問題について、取引先をも巻き込んで事態を大きくし、取引先から重ねてクレームが寄せられるに至ったのである。しかも、控訴人(注:労働者)は、上記のような態度をとるばかりでなく、自らの思い込みに基づいて、上司や同僚のみならず、会社内の他の部署に対して攻撃的で非常識な表現や内容を含むメールを多数送信するなどの行為を繰り返してきた。以上のような控訴人(注:労働者)の言動が、被控訴人(注:会社)と取引先との間の信頼関係を毀損したばかりでなく、被控訴人(注:会社)の会社内部の円滑な業務遂行に支障を生じさせたことは明らかである。」

③ 「控訴人(注:労働者)については、「勤務態度が著しく不良で、改善の見込みがないと認められるとき」(被控訴人就業規則37条8号)に該当するというべきである。」

第5 さいごに

 裁判所は、容易には解雇の社会的相当性を認めず、労働者側に有利な諸事情を考慮したり、解雇以外の手段による対処を求めたりすることが多いとの指摘もあります[iii]。

 しかし、不当解雇(違法な解雇)の効力を争う場合、任意交渉(話し合い)で解決することが難しいときがあり(多いように思います。)、さらに争うには法的な手続(訴訟や労働審判等)を行わざるを得ません。時間的にも、労力としても、多大な負担がかかります。

 また、容易には解雇の社会的相当性を認めないといっても、解雇が有効とされる事案はありますので、解雇の効力を徹底的に争う必要があると考えています。

 能力不足等を理由とした不当解雇(違法な解雇)の効力を争いたい場合、ぜひ当事務所にご相談ください。お問い合わせは、「お問い合わせフォーム」からお願いいたします。


[i] 水町勇一郎.詳解労働法第3版.東京大学出版会,2023.9,p.1007

[ii] 水町勇一郎.詳解労働法第3版.東京大学出版会,2023.9,p.1007

[iii]水町勇一郎.詳解労働法第3版.東京大学出版会,2023.9,p.1008

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