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墜落死亡事故の損害賠償請求が認められた事例(令和6年9月12日東京地方裁判所判決)

2026 2/10
労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
2026年2月10日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

 令和6年9月12日東京地方裁判所判決は、マンション新築工事の作業中に墜落して死亡したとび職の労働者のご遺族が、工事の元請及び下請であった被告らに対して、安全配慮義務違反等に基づき損害賠償請求した事案です。

 事故の内容については、以下のとおり判示されています。

 「ア 本件事故当時、新築マンションの1階床面部分にはコンクリートが打設され、柱及び梁となる鉄骨は全て組み上げられており(以下、この組み上げられたものを「本件建屋」という。)、4階床面部分の高さは地上から約7.42mであった。本件建屋2階から4階までの床面部分については、未だ床板は設置されておらず、床板に代わる鉄製の板(以下「デッキ板」という。)が梁と梁との間に渡し架けられていたが、転落防止用の安全ネットは張られていなかった。また、柱と柱との間には、作業員が安全帯を装着するための親綱も取り付けられていなかった(以下、安全ネット及び親綱並びにこれらの設置に必要な資材を総称して「安全仮設資材」といい、建築現場での作業を安全に進めるために同資材を用いて設置する仮設備のことを「安全仮設」という。)。(甲21、弁論の全趣旨)
 イ 亡Aは、9月6日午前7時30分頃、被告Y3と共に工事現場に入場した。亡Aは、同日午前8時5分頃、本件建屋4階床面部分の建て入れ作業を行っていたところ、1階床面部分のコンクリート上に墜落し、内臓損傷により死亡した。(甲2、21)」

 雇用主の不法行為責任については、次のとおり判断されています。

 「本件工事における鉄骨組立て工事は、本件建屋4階床面部分が地上から約7.42mに位置するなど高所作業を伴い(前提事実(2)ア)、安全仮設がなければ作業員の生命・身体に重大な危険が及ぶことは明らかなものであったところ、被告Y3は、亡Aの雇用者という立場にあり、本件事故当日において亡Aを上記鉄骨組立て工事(そのうちの建て入れ作業)に従事させたのであるから、被告Y3には、亡Aに対し、雇用契約上はもとより不法行為法上も、亡Aの安全を確保すべき注意義務があったというべきである。それにもかかわらず、被告Y3は、本件現場に安全仮設が設置されていないことを認識しながら、亡Aが上記作業に従事するのを回避せずにそのまま上記のとおり従事させたのであるから、同被告には、上記注意義務に反する過失があったというほかない(以上について、争いがない。安衛法21条2項、労働安全衛生規則〔以下「安衛規則」という。〕518条、521条1項参照)」

 他にも、例えば、特定元方事業者の責任については、次のとおり判示されています。

 「被告Y1は、本件工事につき特定元方事業者(安衛法15条1項)に当たり、同条項の関係請負人(本件でいえば、被告Y4、被告Y2及び被告Y3)及び関係請負人の労働者(本件でいえば、亡A)が、本件工事に関し、安衛法又は同法に基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならず(同法29条)、また、関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによって生ずる労働災害を防止するために必要な措置を講じなければならなかった(同法30条1項)。そして、安衛法及び安衛規則(厚生労働省令)は、事業者は、①労働者が墜落するおそれのある場所等に係る危険を防止するため必要な措置を講じなければならず(同法21条2項)、②高さが2m以上の箇所で作業を行なう場合において、(ア)墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならず、それが困難なときは、防網(安全ネット)を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならず(同規則518条)、(イ)労働者に要求性能墜落制止用器具等を使用させるときは、要求性能墜落制止用器具等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない(同規則521条1項)と規定する。以上のように、被告Y1が本件工事において特定元方事業者の立場にあり、関係請負人が上記法令の規定に違反しないよう必要な指導や労働災害防止の措置を講じなければならなかったことのほか、高所作業を伴う建築工事において作業員の墜落事故を防止する措置を講ずることは、当該工事の事業者として最も基本的でかつ必須のものであることからすると、被告Y1には、亡Aを含む作業員の墜落事故を防ぐため、本件現場に関係請負人が安全仮設を設置したかを監視し、これが設置されていなければ工事を中断しても関係請負人に対してその設置をさせる注意義務があったというべきである。」

 「それにもかかわらず、被告Y1が被告Y2ら関係請負人に安全仮設を設置させていなかったことは明らかであるから、被告Y1は、上記注意義務に反する過失があったというべきである。」

 過失相殺は、なされていません。当該裁判例は、「亡Aは、9月6日朝、建て入れ作業のため、本件現場に入場したところ、それに先立って、原告X1に対し、LINEで、「今日の現場安全設備何も無くてとんでもないから。何かあったらごめん」と伝えていた。」と認定しています。この事故が起きた現場は、安全対策が不十分で、危険性が高かったといえます。安全対策の不備、労働環境の危険性が、過失相殺の判断にも影響したと考えられます。

 労災と認定されており、損益相殺がなされていますが、損害としては、結論としては、合計1億1000万円弱が認められています。

 墜落事故の損害賠償請求については、弁護士にご相談ください。

 当事務所もご相談をお受けしています。

     

    労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
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