うつ病や自死等の精神疾患の労災申請に関して、厚労省は、精神障害の労災の認定基準を策定しています1。
そして、仕事による心理的負荷(ストレス)が生じる出来事の一例として、パワハラが掲げられています。
パワハラについては実態を証明できるのかという問題がありますが、仮に実態を証明できたとして、労災に届きうるのかも問題になり得ます。
パワハラがある職場によってうつ病や適応障害等の精神疾患と診断され、又は自死されたのですから、ご本人にとって大変苦しい状況であったのは間違いありません。
ただ、労災の認定基準の別表1「業務による心理的負荷評価表」では、パワハラの心理的負荷の強度を「中」や「強」と判断する具体例として、次のような具体例を明記しています。
「中」の具体例:上司等による次のような身体的攻撃・精神的攻撃等が行われ、行
為が反復・継続していない。次のようなの例としては、人格や人間性を否定するよう
な、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃等。
「強」の具体例:上司等から、次のような精神的攻撃等を反復・継続するなどして執拗に受けた等。次のようなの例としては、人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃等。
「中」程度の強度の心理的負荷が一つ認められるだけでは、通常、労災とは認定されません。
そして、上記の「中」程度の強度の心理的負荷の具体例としても、人格や人間性を否定するような業務上明らかに必要性がない等の精神的攻撃等が掲げられています。私も、「中」程度の強度のパワハラでも、相当きついと感じると思います。ですが、それだけだと、労災には届かない可能性があります。
また、「中」程度の強度のパワハラの具体例からも分かるように、「中」程度の強度のパワハラも、(事案によっては)違法性を認め得ると思います(そもそも通常はパワハラであることを前提にしていると思います。)。しかし、うつ病や自死等の精神疾患の労災では、パワハラが違法かどうかではなく、パワハラがどれほど人を苦しめるものであったのかが問題になります。
パワハラであることを前提に心理的負荷の強度が問題になることに加えて、パワハラに限らないですが、パワハラは、同じ事実(例えば上司のとある発言)を前提にしても、労働者・ご遺族側から見るか、使用者側から見るかによっても、評価が異なることがあります。例えば、私から見ても相当きついだろうなという言動について、使用者側から、そもそもパワハラに当たらないと主張されることもあります。もちろん、労基署の評価とも異なる可能性もあります。
ですので、パワハラによるうつ病や自死等の労災申請では、パワハラの評価を慎重かつ十分に行う必要があります。
のみならず、仮にパワハラが主たる要因だとしても、ご本人が置かれた立場からすると、パワハラ以外にも心理的負荷を与えていた事象があるかもしれません。ご本人やご遺族が労災申請をする際にも、パワハラのみに主張を絞る必要が必ずしもなく、ご本人が受けた心理的負荷を十分に主張できると良いと考えられます。
パワハラによるうつ病や自死等の精神疾患の労災申請は、弁護士にご相談ください。
当事務所もご相談をお受けしています。
