経歴詐称は、一般に、採用面接等において、虚偽の学歴、職歴、犯罪歴等を申告することです。経歴詐称は、懲戒事由として、会社の就業規則に挙げられていることが多いです。
経歴詐称がある場合、会社は、労働契約の取消し等を主張することができる場合があります。労働契約の取消し等ではなく、懲戒処分の理由にもなり得ます。
学歴、職歴等のみならず、うつ病や適応障害等の精神疾患の詐称を理由とする懲戒処分等の労働問題も、生じ得ます。
令和5年1月19日東京地方裁判所判決でも、判決の理由では特に判断されていませんが、会社側から、「原告は、被告との採用面接の際に、健康状態について聞かれたものの健康である旨回答し、うつ病を患っていることを言わなかった。これは、経歴詐称に準じる行為である。」との主張がされています。
それでは、うつ病等の精神疾患の病歴の詐称についても、懲戒処分の理由になり得るのでしょうか?
例えば前職での職場環境によってうつ病等の精神疾患になり自己都合退職する方もいれば、休職期間満了で自然退職・解雇になる方もいます。あるいは、職場とは関係なく、ご病気になられる方もいます。そういった方々は、病歴について、職場に申告しなければならないのでしょうか。
病歴については、そもそも、会社は、原則として、収集してはなりません1。そのため、うつ病等の精神疾患の詐称が懲戒処分の理由になる場合は、限定的に解釈されるべきとの考えがあります。
平成18年5月11日札幌高等裁判所判決は、うつ病等の精神疾患ではなく、視力障害を告げなかったことが(も)問題とされましたが、「被控訴人は、控訴人の採用面接を受けた際、健康状態の欄に「良好」と記載された履歴書(中略)を提出し、採用面接を担当した三郎専務に対して視力障害があることを積極的には告げなかったものと認められるものの、履歴書の健康状態の欄には、総合的な健康状態の善し悪しや労働能力に影響し得る持病がある場合にはこれを記載するのが通常というべきところ、被控訴人の視力障害は、総合的な健康状態の善し悪しには直接には関係せず、また持病とも直ちにはいい難いものである上、(中略)被控訴人の視力障害が具体的に重機運転手としての不適格性をもたらすとは認められないことにも照らすと、被控訴人が視力障害のあることを告げずに控訴人に雇用されたことが就業規則61条(重要な経歴をいつわり、その他不正な方法を用いて任用されたことが判明したとき)の懲戒解雇事由及び同54条4号の普通解雇事由に該当するということまではできない。」と判示しています。
うつ病等の精神疾患についても、懲戒処分等の理由となる詐称といい得る程の事態に該当し得るかは、具体的な状況に基づいて、慎重に判断される必要があると考えます。
うつ病等の精神疾患の詐称を理由とする懲戒処分などの労働問題は、弁護士にご相談ください。
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