パワハラによる過労うつや過労自死の労災
精神疾患の労働災害(労災)の認定基準では、うつ病・適応障害等の精神疾患や自死(自殺)の労働災害(労災)が認定されるためには、原則として精神障害の発病前おおむね6か月間の仕事による強いストレスが認められる必要があります。
上司等からのパワーハラスメントは、仕事による強いストレスとして認められる可能性があります1。精神障害の労働災害(労災)におけるパワーハラスメントについては、「上司等からのパワーハラスメントによる精神障害の労災認定」をご確認ください。
被災者やそのご遺族がパワハラを証明する必要がある?
パワハラによってうつ病や適応障害等の精神疾患になったり、自死した場合、労働災害(労災)と認められるかは、パワハラがあったことを証明できるかがポイントになります。
労基署の調査ではパワハラの事実が明らかにならず、労災請求をした被災者やご遺族が証拠を持っていない場合、労基署は、パワハラがあったとは認めない可能性が高いです。
パワハラを理由とした労災請求をした場合、労基署がパワハラがあったと認めなければ、パワハラによってうつ病や適応障害等の精神疾患になったり、その結果として自死したとの労災認定は、されない可能性が高いです。
そのため、被災者やご遺族がパワハラがあったと証明できるかがポイントになります。
パワハラを証明する方法にはどのような方法がある?
パワハラを証明する方法としては、大きく分けて、以下の2通りあります。
①メール、チャットや録音等の客観的な証拠によって証明する方法
②同僚(協力者)等の供述等の主観的な証拠によって証明する方法
メール、チャットや録音等の客観的な証拠には、文言等が客観的に残っています。例えば「死ね。」、「馬鹿野郎。」、「無能。」、「使い物にならない。」等の叱責が記録されている場合、そのような叱責がされたこと自体は、証明できる可能性が高いです。
そのため、証拠としての価値は、客観的な証拠の方が高いと判断されることが多いと思われます。
本人のLINEやメール等もパワハラの証拠になる?
パワハラの証拠としては、メールやチャット等、録音、メモ、日記、協力者の証言等様々なものが考えられます。
パワハラ加害者からのメール等は、十分、パワハラを証明する証拠になり得ます2。それでは、被災者ご本人のLINEやメール等は、パワハラの証拠になり得るのでしょうか。
結論としては、LINEやメール等の送信時期や内容次第では、パワハラを証明する証拠になり得ます3。
以下は、参考となる裁判例です。
東京地判令和2年3月30日
「被告は、亡Aと被告との間のLINEは、他愛もないやり取りが中心であり、被告の亡Aに対するパワーハラスメントを窺わせるような事情がないため、本件メモの記載は信用できないと主張する。(中略)被告は、取引がうまく行かない時などには「怒り」「落ち込む」などの絵柄のスタンプをわずか1分ほどの間に数十個連続して送るなど自らの感情をぶつけていたこと(乙10)、亡Aが平成28年11月29日午前11時36分に被告に送信したLINEには、「普段ならば、すぐに注文を出さないと対応が遅いと怒鳴られるので、迅速に対応しただけです。」との記載があり(乙9の7、10の7)、普段から被告が些細なことで亡Aに怒鳴っていた状況がうかがえることなどからすれば、上記LINEのやり取りをもって上記アないしエの認定判断を覆すには至らない。」
東京地判令和6年12月12日
※パワハラとまでは認められませんでしたが、叱責が認定されています。
「(ア)認定事実1(3)及び証拠(甲36、乙1の1〔339頁〕、乙1の2〔578頁〕、原告本人〔16頁〕)によれば、亡Aは、平成26年10月8日、東京汐留事業所を退室(18時46分)した直後である18時50分、原告に対し、Eリーダーから「こんなミス新入社員でもしない」旨の激しい叱責を受けた旨のラインメッセージ(以下「本件メッセージ」という。)を送信するとともに、帰宅後、出張で利用する航空券につき、正当な理由があって安いパック旅行の料金ではなく正規料金で購入したところ、Eリーダーから正規料金で購入したことを強く怒られた、正規料金で購入した理由を説明することもできなかった、と話したことが認められる。
この点につき、Eリーダーは、労働基準監督官による聴取及び証人尋問において、「こんなミス新入社員でもしない」との発言については記憶がなく、そのような言い方はしていなかったはずだとしつつ、(中略)
これらの事実によれば、Eリーダーは、平成26年10月8日、亡Aに対し、亡Aが出張で利用する航空券を正規料金で購入したことについて、他の従業員の面前で、早めに出張の予定を組んで割安なパック旅行を利用して航空券を購入できなかった点を叱責したことが認められる。また、亡Aが、①平成26年9月9日、同年10月8日、同年12月3日、同月17日の4日、Eリーダーから叱責を受けた旨のラインメッセージを送信しているところ、このうち本件メッセージのみ「こんなミス新入社員でもしない」との叱責の言葉を具体的に記載していること(認定事実1(3))、②前記のとおり、オフィスを退勤して5分以内に本件メッセージを送信していることからすれば、本件メッセージは、亡Aが、職場で体験した事実を、勤務終了後直ちに原告に報告したものであると認められ、その内容を信用することができる。そうすると、Eリーダー及びPがこのような言葉による叱責の記憶がない旨述べていることを勘案しても、Eリーダーは、「こんなミス新入社員でもしない」と言って亡Aを叱責したと認めるのが相当である。
(イ)Eリーダーによる上記の叱責は、業務指導の範囲内であるものの、「新入社員でもしない」との言葉は、亡Aの10年超のキャリアを否定するとも捉えられかねない厳しいものであり、強い叱責に当たる。」
パワハラによるうつ病・適応障害や過労自死の労災は弁護士にご相談を
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- https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/001140929.pdf ↩︎
- メールやチャット等は過労うつや過労自死の労災のパワハラの証拠になる? ↩︎
- 梅田和尊.最新テーマ別実践労働法実務6パワハラの法律実務.株式会社旬報社,2025.6,p.43 ↩︎
