令和2年8月31日旭川地方裁判所判決労働判例1247号71頁は、製麺機への巻き込み事故の損害賠償請求が認められた事例です。
被災者は、製麺業務に従事中、会社が管理する製麺機に左手を巻き込まれる事故によって、傷害を負い、後遺障害が残りました。
そこで、被災者は、会社に対して、約790万円の損害賠償請求をして、本件判決は、会社の約365万円の賠償義務を認めました。
なお、労災認定も受けていました。
【本件判決の判断】
本件判決は、次の内容等を述べて、会社の安全配慮義務違反を認めました。
・本件製麺機は、常時刃が露出している危険性を有している。
・会社は、面に縮れを付けるために、左手で製麺機から出てくる麺を押さえる作業が日常作業として予定されていた。
・予定されていた作業は、露出して上下する刃の真下に手を伸ばすという、高い危険性を有する作業であった。
・会社は、労働者にそのような危険性を有する作業をさせるにあたって、刃に覆いを付けるなどの物的な対策をするなどして、当該作業から生じる危険性を防止する義務を負っていたというべきである。
・しかし、会社は、本件製麺機の刃を常時露出させたまま、特段の物的対策を取ることなく被災者に作業に従事させる等していたのであるから、安全配慮義務違反が認められる。
結論として、被災者に3割過失があるとして、過失相殺されています。
本件判決の事案では常時刃が露出している製麺機での事故が問題となりました。労働安全衛生規則では、機械による危険の防止について、以下の定め等が規定されています。
「事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆おおい、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。」(労働安全衛生規則101条1項)
「事業者は、機械の運転を開始する場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、一定の合図を定め、合図をする者を指名して、関係労働者に対し合図を行なわせなければならない。」(同104条1項)
「事業者は、食品加工用切断機又は食品加工用切削機の刃の切断又は切削に必要な部分以外の部分には、覆い、囲い等を設けなければならない。」(同130条の2)
「事業者は、第百三十条の二の機械(中略)から原材料を取り出す場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、当該機械の運転を停止し、又は労働者に用具等を使用させなければならない。」(同130条の4)
会社の安全配慮義務違反を検討するにあたって、上記の規定等も参考になります。
事故に遭った場合には、労災申請をご検討ください。また、事故時の状況、安全教育の有無等の事実関係を記録化等によって証拠として残しておくと良いです。
