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【労災】精神障害の発病が労災とは認められなかった事例・令和7年9月10日東京地方裁判所判決

2026 3/21
労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
2026年3月21日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

 令和7年9月10日東京地方裁判所判決・国・横須賀労基署長事件は、精神障害の発病が労災とは認められなかった事例です。

 労働者が労災保険の療養補償給付及び休業補償給付の支給を請求したところ、横須賀労働基準監督署長が不支給決定を出しました。本件判決の事案では、不支給決定の取消しが求められましたが、請求が認められませんでした。

【事案の概要】

・原告は、平成19年、会社に入社し、船員として業務に従事していました。

・原告は、平成30年10月、陸上で船の運航管理業務を行う海務部主任となり、調査・研究船の運管管理業務を堪能しました。

・原告は、令和2年1月から、都立高校の実習船の運航管理業務を担当しています。

・原告は、令和3年3月、実習船の運航管理業務等により精神障害である適応障害を発病したと主張して、横須賀労働基準監督署長に対して、休業補償給付等の支給請求をしました。

【判決の判断】

・精神障害の発病時期については、医師の意見に不合理な点がないとして、令和元年11月頃に適応障害を発病し、その後寛解することなく令和2年11月頃に悪化しうつ病エピソードに移行したと判断された。

・令和元年11月の適応障害発病前おおむね6か月の間に心理的負荷が極度のものとなる出来事があったとは認められない。

・研究船が当初寄港を予定していた宮古港への台風接近が予想されたことから令和元年10月12日に青森港に入港する予定としたこと、研究船が電子海図のバックアップとして所持することが法定されている青森港の最新の紙海図を所持していなかったこと、研究船船長が青森港への入港を求めたこと、原告が海務部の上司に対応を相談したところ入港を認めるべきであるとの考えが示されたこと、原告が青森港入港を認めたことで何ら不利益な扱いを受けていないことが認められる。

 当時の状況からすれば、入港を認めないとの選択を行うことが現実的には想定し難い状況であった等といえる。原告が研究船の青森港入港を認める判断をしたことは、認定基準別表1の具体的出来事に該当するとは認められず、その他心理的負荷の対象となる出来事とも認められない。

・原告妻と会社との間で原告妻が被害を訴えたハラスメントに関する紛争が生じていたこと、原告が会社と妻との間に入ってやり取りをしていたこと等が認められる。業務以外の心理的負荷が相当程度あった。

・以上の理由から、原告の精神障害の発病に業務起因性が認められない。

・悪化についても、業務上の心理的負荷が「中」程度の出来事が1つ認められるが、他には「弱」程度の出来事が2つないし3つ認められるのみであり、心理的負荷の全体評価が「強」に至らず、精神障害の悪化に業務起因性が認められない。

【さいごに】

 本件では、適応障害の発病前の出来事だけを評価すると、判決が認定した事実を前提とする限り、労災の基準をクリアするのが厳しように思われます。

 また、適応障害発病のうつ病移行について本件判決では悪化と判断されていますが、悪化の場合、仮に全体評価として「強」に至る心理的負荷を与える業務上の出来事があったと認められたとしても、自然経過を超えて著しく悪化したか否かといった医学的論点が残ってしまいます。

労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
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