令和7年12月24日大阪高等裁判所判決は、自死した医師の遺族による病院等の運営者に対する損害賠償請求が認められた事案です。
【事案の概要】
控訴人(原告)は、故人(医師)のご遺族(妻と子)です。
被控訴人(被告)は、故人の勤務先であった医療機関を運営する団体です。
控訴人は、被控訴人に対して、被控訴人が故人に過重な業務をさせたことにより故人が精神障害を発病して自死したものであるとして、安全配慮義務違反があった等と主張して、損害賠償を求めていました。
一審判決では、遺族の請求が全部棄却されていました。
また、別途、労基署長に対する遺族補償給付等の請求がされており、不支給決定が出されましたが、取消訴訟において業務起因性が認められていました(労災として認定されていました)。
平成20年末から平成21年1月頃に故人がうつ病等の精神疾患を発病したとの医学的意見があります。
故人は、平成21年3月、自死されました。
【判決の内容】
・判決では、認定の対象とする期間について、故人の発病時期に関する2つの意見のいう時期のいずれをみたとしても、発病前おおむね6か月の間に相当する期間についての検討を可能にするためとして、平成21年1月末あるいは平成20年12月末から遡った6か月に相当する期間としました。
・病院での業務従事と自死との間の相当因果関係については、①故人とは別のもう一人の常勤医師との人間関係や、人間関係に起因する構想を進めることへの支障等に関する心理的負荷、②連続勤務、③1か月におおむね80時間以上の労働を行ったこと等から、認められています。
具体的には、結論として、「C医師は、体調不良により入院中であったにもかかわらず、分娩及び手術への関与を含め、勤務時間及び内容において通常に近い状態での勤務をすることがあった。退院後、E院長から業務負担軽減について助言を受けるなどしたものの、上記入院によりF医師との人間関係が悪化していたこと等から直ちに同医師の協力を求めることが困難であったほか、F医師に対して指導ないし助言をしたところ、反発を受けただけでなく、その発言の中には、本件産婦人科の運営を立ち行かないものにするおそれがある退職を示唆するものがあった(労災認定基準にいう心理的負荷の強度「中」に相当)。また、その時期と相前後して「1か月当たりおおむね80時間以上の時間外労働」に当たると認められる時間外労働があり(同様に「中」に相当)、さらにこれと相前後して、深夜勤務の翌日から開始する19日間の連続勤務があった(同様に「中」に相当)。そして、その後、深夜早朝の業務従事を織り交ぜつつ、複数の連続勤務があったものである。」、「このような複数の出来事が重なり又は連続していることに照らすと、C医師が本件病院での業務従事により受けた心理的負荷の強度は、総合して、労災認定基準にいう精神障害の発病の原因となるべき「強」に至っていたと認めるのが相当である。」と述べられています。
いずれもどれか一つでは「強」に相当とまでは評価されていません(どれかだけでも労災に届くとまでは評価されていません。)。
・判決は、使用者が業務軽減措置を行っていなかったとして、安全配慮義務違反等を認めています。
・使用者からは、院長が故人の労働実態を認識していなかった旨主張されていました。判決では、病院での入院とその入院中の業務への従事、時間外勤務命令票による連続勤務の状況等が認識可能であると判断されました。
・業務による心理的負荷の評価にあたって労働時間の認定が重要であったと考えられるところ、実際に何時から何時頃まで仕事をされていたのか、休憩時間に休憩することができていたのか、休日にどれくらい働かれていたのか等が、コンピューターのログイン時刻や、診療録、手術申込書、分娩記録台帳、時間外勤務命令票等から詳細に検討・認定されています。ご遺族の代理人が、証拠を確保されていたのではないかと推察されます。
