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パワハラによる心理的負荷等を理由として過労自死と認定された事例・令和3年3月12日福岡地方裁判所判決

2026 2/18
労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
2026年2月18日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

 令和3年3月12日福岡地方裁判所判決労働判例1243号27頁は、パワハラによる心理的負荷等を理由として過労自死と認定し、労災不支給決定処分を取り消しています。

 本件判決では、仕事内容や仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があり、その心理的負荷が「強」と判断されていますが、パワハラについても次のとおり評価されています。

 なお、発病時期も大きな争点になっておりますが、発病時期の論点については、割愛いたします。

 「本件では,認定事実(3)エ及びオのとおり,Dが亡Aに対して,平成23年3月18日には,注文書を客からもらう際の心構えの指導として,「腹黒い」という表現を用い,翌19日には社内発表会の指導の際に「偽善的な笑顔」でいいなどという表現を用いているところ,「腹黒い」及び「偽善的」という表現は,一般的に人に対する否定的評価をする際に用いられる言葉である。そして,亡Aは,従前からDがGやEらに対して非常に厳しい指導態度で臨んでいたのを日常的に目の当たりにしており,自らが指導を受けた際には不満を抱いた表情は見せるものの言い返すことはなかった事実や,自身のことをDが神経質と評しているのを聞いて亡Aが不快感を表していたという事実などからすると,Dは亡Aにとって畏怖の対象となる苦手な上司であったといえる。亡Aは,そのような上司であるDから連日にわたって,「腹黒い」,「偽善的な笑顔」などと言われたところ,これらの言葉はいずれも内心で何を考えているかわからない信用できない人物であることを印象させる同種のカテゴリーに属するものであって,亡Aとしては,上司であるDが亡Aをその言葉のとおり否定的に評価しているものと捉えてもやむを得ない面があったといえるから,これらの発言を単発的なものと評価するのは相当ではなく,一体のものとして評価すべきである。したがって,上記Dの発言は,入社2年目の亡Aにとっては相当程度の心理的負荷があったものと認められる(中略)。そして,前述のように,これらの発言の前には月100時間を超える長時間労働を余儀なくされていたことからすると,長時間労働によって疲弊していた亡Aに対して追い打ちをかけるような形で心理的負荷がかかったというべきである。
 これを認定基準に即して判断すると,当該出来事は「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」に該当し,当該出来事自体の心理的負荷は「中」程度であっても,その出来事前に月100時間を超える残業時間(恒常的長時間労働)が認められることから,心理的負荷の程度を「強」と修正すべきである。」

 パワハラによるうつ病や自死の労災申請では、パワハラを立証できるかが問題となるのはもちろんなのですが、心理的負荷を評価する際(、さらにいえば見通しを検討する際)に客観的な表現等も重要になってきます。例えば客観的には否定的に評価されているとはいえない言動について本人がそのように受け取ったとしても、パワハラと認定されない可能性があり、仮に認定されたとしても、本人が感じた程度の心理的負荷があったとは評価されない可能性があります。

 本件判決では上記のようにかなり酷い表現が用いられていることから、さらにいえば経緯や上司との関係性等も立証できたことから、相当程度の心理的負荷があったと評価されています(それでも、出来事自体では「中」程度の心理的負荷の評価にとどまっています。)。

 パワハラによるうつ病や過労自死の労災申請は、弁護士にご相談ください。

 当事務所もご相談をお受けしています。

    労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
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