休職期間満了での自然退職又は解雇?
うつ病や適応障害等の精神疾患によって休職することがあります。休職制度は、会社によって、様々な内容が定められています。なかには、休職期間満了時に復職できない場合、自然退職(退職扱い)や解雇にすることが定められている場合があります。
そのような定めがあっても、うつ病や適応障害等の精神疾患の原因がパワハラや長時間残業等の仕事である場合(要は労災である場合)、休職期間満了での自然退職又は解雇は、違法です。労災での休職中に労働者を解雇や、休職期間満了での退職等にできる?もご覧ください(会社が労災とは認めずに自然退職又は解雇にすることは、あります。)。
他方で、うつ病や適応障害等の精神疾患の原因が仕事以外の場合(要は労災とは認められない場合)、原則としては、休職期間満了時に復職できないとき、自然退職や解雇になります(規定自体が違法である等の特段の事情が無い限り、自然退職や解雇は違法ではありません。)。
軽作業から徐々に通常業務に復帰できる場合は?
それでは、例えば、休職前の通常業務にいきなり復帰することはできないけれども、軽作業から徐々に通常業務に復帰可能である場合も、休職期間満了で自然退職又は解雇にすることができるのでしょうか。
結論としては、軽作業から徐々に通常業務に復職させることで復帰可能である場合、休職期間満了での自然退職又は解雇が違法になる可能性があります。
エールフランス事件・昭和59年1月27日東京地方裁判所判決労働判例423号23頁は、次のように判示しています。
「自然退職の規定は、休職期間満了時になお休職事由が消滅していない場合に、期間満了によって当然に復職となったと解したうえで改めて使用者が当該従業員を解雇するという迂遠の手続を回避するものとして合理性を有するものではあるが、本件におけるように、病気休職期間満了時に従業員が自己の傷病は治癒したとして復職を申し出たのに対し使用者の側ではその治癒がまだ充分ではないとして復職を拒否する場合の同規定の適用解釈にあたっては、病気休職制度は傷病により労務の提供が不能となった労働者が直ちに使用者から解雇されることのないよう一定期間使用者の解雇権の行使を制限して労働者を保護する制度であることに思いを至せば、右に述べた自然退職の規定の合理性の範囲を逸脱して使用者の有する解雇権の行使を実質的により容易ならしめる結果を招来することのないよう慎重に考慮しなければならない。」
(中略)
「傷病が治癒していないことをもって復職を容認しえない旨を主張する場合にあっては、単に傷病が完治していないこと、あるいは従前の職務を従前どおりに行えないことを主張立証すれば足りるのではなく、治癒の程度が不完全なために労務の提供が不完全であり、かつ、その程度が、今後の完治の見込みや、復職が予定される職場の諸般の事情等を考慮して、解雇を正当視しうるほどのものであることまでをも主張立証することを要するものと思料する。」
(中略)
「被申請人が申請人に対してなした本件退職取扱の当否について判断するに、被申請人が申請人の復職申出に際してのタウン勤務への転勤を希望したのに対してこれを拒否したことは、前認定の被申請人の当時の経営事情からしてやむえなかった措置として認容しうるが、原職復帰を不可能として復職申出を拒否し、昭和五五年一二月二五日をもって退職したものとして扱っている措置は、相当性を欠き、これを容認することはできないものと思料するが、その理由は次のとおりである。
すなわち、被申請人が申請人の復職を不可能と判断したのは産業医の一瀬正治医師の判断を尊重したためであることは前認定のとおりであるが、その一瀬医師の判断の基礎となっている資料は、被申請人の新東京国際空港支店運航課の職場と職務内容の現場視察の結果のほか、前記渡辺□、片桐鎮夫各医師の意見書であったことは前認定のとおりであるところ、これら両意見書の内容も、前認定のとおりであって、いずれも復職の可能性自体を否定するものではなく、復職にあたっては申請人に軽度ではあるが残っている身体平衡機能の異常の後遺症を考慮して自動車運転、高所作業等を禁止するという内容のもの、あるいは、復職にあたっては軽勤務から徐々に通常勤務に戻すことが望ましいという助言を与える内容のものであることが認められ、これら意見書に記載された内容の限りにおいては、前認定の運航搭載課の職場事情のもとにおいて申請人を他の課員の協力を得て当初の間はドキュメンティストの業務のみを行なわせながら徐々に通常勤務に服させていくことも充分に考慮すべきであり、前記の後遺症の回復の見通しについての調査をすることなく、また、復職にあたって右のような配慮を全く考慮することなく、単に一瀬医師の判断のみを尊重して復職不可能と判断した被申請人の措置は決して妥当なものとは認められない。また、右一瀬医師の意見書は、《証拠略》及び前認定の同意見書の記載内容自体からして、申請人の復職可能性の判断につきコーディネーターとドキュメンティストの両方の業務を交互に担当する通常勤務の場合を想定して判断したものであって右に記載した配慮をも含めての判断ではなかったことが窺われ、一方、《証拠略》によれば、一瀬医師の専門分野は形成外科、整形外科であることが認められ、したがって、一瀬医師の前記意見書における判断は、運航搭載課の職場事情が判断資料として加えられた点を除けば、前記渡辺医師や片桐医師の意見書に比べて特に措信すべきものであるということはできないから、同医師の意見書をもって被申請人の右措置が相当である旨の立証があったものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる疎明もみあたらない。
よって、被申請人の申請人に対する本件退職取扱の措置は無効のものであり、申請人の復職申出を容れて申請人を従業員として取扱うべきものであると思料する。」
当該裁判例は、うつ病や適応障害等の精神疾患の休職の事案ではありません。しかし、当該裁判例の趣旨からすれば、うつ病や適応障害等の精神疾患の復職についても、参考になります。
うつ病や適応障害等の精神疾患の休職期間満了での自然退職・解雇、復職拒否については、弁護士にご相談ください。
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