コロナに感染し亡くなったご遺族が勤務先を訴えた裁判に関して、控訴審において勤務先が見舞金300万円を支払う和解が成立したとの報道に接しました。
一審判決では、約6800万円の支払いを命じる判決が下されていたようです。
一審判決は、恐らく、令和7年3月27日東京地方裁判所判決です。
令和7年3月27日東京地方裁判所判決によれば、ご遺族は、遺族補償年金等の支給を受けています。つまり、労災と認定されており、労基署は、コロナの感染やそれによる死亡について、業務起因性(仕事が原因であること)を認めています。
また、当該判決は、安全配慮義務違反等について、次のとおり判断していました。
「本件店舗は各フロア10人から20人程度の客を収容可能な構造になっており、24時間営業を行っていたところ、繁華街の中に立地していたことから、客の中には他の飲食店から流れてくる客や飲食店の店員もおり、令和3年7月頃には徐々に客足も戻っている状況であった。それにもかかわらず、前記1(3)及び(4)認定の事実に弁論の全趣旨を総合すると、被告らは、緊急事態宣言発令中及びまん延防止等重点措置がとられている期間中も営業時間の変更はせずに営業を継続し、酒類の提供も特に制限することなく行ったこと、本件店舗1階の客席と厨房との間はカウンターによって仕切られてはいたが、完全に隔離されていたわけではなかったこと、被告らは、本件店舗の窓やドアを常時開放し、ダクトを運転することによって一定の換気を行い、従業員に対してはマスク着用・手指の消毒を求めるなどしていたが、客に対してはマスク着用や会話を控えるよう要求することはなく、入店する客の人数制限をすることもなく、客同士の間にアクリル板などの仕切りを設置することもせず、会話を制限することもしなかったこと、本件店舗で20人ほどの客が宴会を開くこともあったこと、本件店舗にはタイムカードもシフト表も備え付けられておらず、残業や休日出勤も日常的に行われていたことが認められる。そうすると、被告らが、本件店舗において、従業員の新型コロナウイルス感染回避のために必要とされる措置を十分に講じず、従業員の勤怠管理も適切に行っていなかったことは明らかといわざるを得ず、被告らは亡Aの生命、身体に危険が生じさせないようにする義務を違法に怠っていたものといわざるを得ない。この被告らの行為は亡Aに対する関係で、それぞれ不法行為を構成するというべきであり、共同不法行為として、亡Aに対して連帯して責任を負うべきものと解される。」
コロナウイルス感染症への罹患については、次のとおり判断されていました。
「亡Aは、体調不良を訴えた令和3年7月11日当時、住み込みで本件店舗の上階にある従業員用の居室で独り暮らしをし、深夜から翌日昼間までの本件店舗における勤務に従事しており、同年6月頃以降は休日の取得ができないこともあったと認められる。そうすると、亡Aは、同年6月頃以降は、基本的に、本件店舗がある建物内にある自己の居室と本件店舗とを往復する生活を送っていたものと認められ、本件店舗以外の場所で新型コロナウイルスの感染者と接触する機会があったことはうかがわれない。このことに、前記2認定説示のとおり、本件店舗において従業員の新型コロナウイルス感染回避のために必要とされる措置が十分に講じられていなかったこと、令和3年7月14日以降、本件店舗に当時在籍していた従業員12名に対してPCR検査が実施された結果、亡Aを含む4名から陽性反応が出たことを併せ考慮するならば、亡Aは体調不良を訴えた同年7月11日以前に本件店舗において新型コロナウイルスに感染したものと認めるのが相当である。」
亡くなったこととの相当因果関係については、次の判断等が示されていました。
「被告らは、タイムカード等による適切な勤怠管理を行うこともなく、このような亡Aの繁忙状況や長時間勤務の状況を改善することなく放置していたことは明らかであって、かかる事実も踏まえるならば、被告らは、亡Aが本件店舗における勤務の際に新型コロナウイルス感染症に罹患し、その生命に危険が及ぶ事態が生じることについて十分に予見可能であったと認めることができる。以上によれば、被告らの不法行為と亡Aの死亡結果との間には相当因果関係が認められる。」
報道によれば、使用者側は、控訴審では、感染経路や安全配慮義務の有無について争ったようです。
労災が認定されても(仕事が原因であると認定されても)安全配慮義務違反等とはいえないこと(使用者側に法的な責任があるとはいえないこと)は、うつ病や過労自死等の精神疾患の発病や自死でもあります。使用者側が、うつ病等の精神疾患発病の原因が仕事ではないと主張することすらあります。
当該判決もコロナ感染者の死亡率等にも触れていますが、うつ病や過労自死等の精神疾患の損害賠償請求でも、精神疾患と自死との相当因果関係が問題になることもあります。
コロナ感染の労災や損害賠償請求は、弁護士にご相談ください。
