ご存命の方からうつ病等の労災申請のご依頼をいただくと、必要に応じて、主治医にお時間をいただき、お話をさせていただくことがあります。
過労自殺(自死)で、自死された方に通院歴がある場合にも、主治医にお話を聞かせていただくことがあります。
というのも、うつ病等の労災申請では発病の有無や時期が労災の原則的な要件に関わります1。そして、厚労省の精神障害の認定基準では、発病時期等の判断について、「主治医の意見書や診療録等の関係資料(中略)により、医学的に判断する。」とされ、「対象疾病の治療歴がない自殺事案を除くすべての事案について、主治医から、疾患名、発病時期、主治医の考える発病原因及びそれらの判断の根拠について意見を求める。」とされています2。
このように、うつ病等の労災申請では主治医の意見も重要になってきます。そのため、労災申請の準備をするにあたって、主治医の意見も確認する必要があることが多いと思われます。
とある精神科医の先生は、ご自身の新人医師の頃のご経験として、「自殺に直面した精神科医の内面は、自らの対応を悔い、自責の念に駆られ、訴訟の危険をおそれ・・・と多様な課題に直面して余裕はなく、辞職までをも考えるに至った。こうした混乱のなかで、患者さんの思いを改めてたどり、その痛みに思いをはせ、ご家族の悲嘆に配慮するといった作業はほとんど欠落していた。」と述べられ、その後経験を積まれた後のご経験として、「周囲の反応にとらわれることは少なかったが、治療上の悔いは残った。」等と述べられています3。
ご存命の方の主治医はもちろん、過労自死された方の主治医も、弁護士よりもずっと、患者と向き合い、時には自死と向き合われているのだと思います。過労自死が起きた時、場合によっては医療過誤の法的問題も生じ得るのであり、患者のご遺族とも緊張関係が生じることがないわけではないのですが、労災申請等の代理人として主治医にお会いするときは、主治医に対しても、やはり、適切に、丁寧に接したいと思っています。
- 精神障害の労災の労災請求の手続の流れ ↩︎
- 心理的負荷による精神障害の認定基準(令和5年9月1日基発0901第2号別添) ↩︎
- 浅野弘毅外編「自殺と向き合う」110頁 ↩︎
