過労うつ・過労自死の労災請求に対する労基署の不支給決定
長時間のサービス残業、上司からのパワハラ、セクハラ等々、過酷な職場環境での仕事が原因で、うつ病や適応障害等の精神疾患の病気になったら、労働者は、労災認定を受けられます(過労うつ)。そして、仕事が原因のうつ病等の病気によって自死した場合、そのご遺族は、労災認定を受けられます(過労自死)1。
労災認定は、労基署に対して労災請求をし、労基署が認定することで、受けられます2。労災認定を受けると、休業補償や遺族補償等の補償を受けられます3。
しかし、実際には仕事が原因であるのに、長時間労働、パワハラやセクハラ等の仕事によるストレスが認定されずに、労基署から不支給決定(労災が認定されない結果になる)が届くことがあります。
それでは、不支給決定が届いた場合、被災者やそのご遺族は、どう対応すれば良いのでしょうか?
審査請求の申立て4
労基署から届いた不支給決定通知書にも書いてあると思いますが、労基署が不支給決定を出したら(労災と認めなかったら)、被災者やそのご遺族は、不服(審査請求)を申し立てることができます。
具体的には、被災者やそのご遺族は、労働保険審査官宛に、審査請求の申立てを行うことができます。
不支給決定通知書にも記載されていると思いますが、審査請求は、原則として、処分のあった日の翌日から3か月以内に行う必要があります。
不支給決定に納得がいかない場合には、審査請求を行うか否かを検討するのが良いです。
労基署の不支給決定の理由の確認
労基署は、不支給決定(労災と認めない決定)を出すにあたって、調査を行って、判断をしています。そして、通常、精神疾患の労災の調査や判断に関する資料が存在しています。要は、不支給決定通知以外に、より詳細な資料が存在しています。
調査や判断に関する資料は、不支給決定を出した労基署を管轄する労働局に対して開示請求をすることで、開示してもらえます(マスキング部分もあります。)。開示請求の手続きについては、労災請求に対する労基署の判断内容等に関する記録の開示請求をご覧ください。
神奈川県内の労基署の不支給決定についての根拠資料は、神奈川労働局に対して必要書類を提出して、開示請求をします。神奈川労働局は、保有個人情報開示請求制度についての案内のページを用意しています(神奈川労働局「行政機関が保有する個人の情報を本人に対して開示する制度について」)。
保有個人情報開示請求書には開示を請求する保有個人情報(開示を求める情報の具体的な内容)を記載する必要があります。記載例については、開示請求する保有個人情報の特定に係る記載例が参考になります。
労基署の不支給決定通知書に記載された内容だけでは、労基署がどのような調査を行って、どのような理由で判断をしたのかが分かりません。そのため、審査請求をするにせよ、しないにせよ、不服を申し立てるか悩んでいる場合には、不支給決定の根拠資料の開示請求をすることをお勧めいたします。
なお、審査請求の申立てには期限があるところ、開示請求の結果が出るのが審査請求の期限の後になる可能性もあります。審査請求の申立ての期限が過ぎないよう、ご留意ください。
審査請求での戦い方の検討
労基署の不支給決定の判断を覆すには、不支給決定が出された理由を確認して、審査請求での戦い方を検討する必要があります。
精神疾患の労災の原則的な要件は、①うつ病等の労災保険の対象になる病気になったこと、②病気になった前のおおむね6か月の期間に仕事による強いストレスがあったといえること、③仕事以外の理由や個体側の要因によって病気になったとはいえないこと、です。
そのため、過労うつや過労自死の労災と認められなかった理由としては、①うつ病や適応障害等の精神疾患の病気になったことが認められなかった、②病気になった時期のおおむね6か月の前に仕事による強いストレスが認められなかった等の理由が考えられます。
認められなかった理由の上記の②は、具体的には、そもそも被災者やご遺族が主張している長時間労働やパワハラ等の存在が認定されなかった、パワハラ等の存在が認定されるけれども労災と認められるほど強いストレスではなかった、うつ病等の病気になった時期がパワハラ等よりも前に認定されてパワハラ等が評価の対象にならなかった等の理由等が考えられます。
いずれにしても、労災請求での主張と証拠や、労基署の判断の根拠資料を確認する等して、審査請求での戦い方を検討する必要があります。
証拠が不十分であればさらに証拠を集めて証明できるのか、発病時期の判断が誤っているのであれば病気になった時期をずらせるのか、パワハラ等の認定された事実の評価が誤っている(「強」のストレスと評価すべきなのに「中」と判断されている等)のであればその評価を正せるか等、方針を検討する必要があります。
過労うつ・過労自死の労災の不支給決定に対する審査請求は弁護士にご相談を
過労うつ・過労自死を理由に労災請求をしたけれども労基署から不支給決定が届き、不服を申し立てることを検討している労働者やそのご遺族は、弁護士にご相談ください。
当事務所もご相談をお受けしています。
