解雇理由証明書とは?
解雇理由証明書は、解雇の理由を記載した証明書です。労働基準法では、従業員が、退職する際に、会社に対して、解雇の理由を記載した証明書を請求した場合、会社は、遅滞なく解雇理由証明書を交付する必要があるとされています。
労働基準法22条1項 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
2項 労働者が、20条1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
3項~4項 略
解雇理由証明書の交付を求めた方がいいの?
会社から解雇され、不当解雇を争う場合、会社が解雇した理由が事実として存在するのか、存在するとして解雇に値するほどの理由なのかが問題となります。
解雇予告通知書や、口頭では、能力が不足している、ミスが多い、指導しても改善しない等と説明されることがあります。ただ、労働審判や裁判等で不当解雇の効力を争った際に、会社は、これまで主張してこなかった解雇の理由を主張することがあります。
ですが、解雇理由証明書を交付させることで、解雇理由証明書に記載されている理由こそが会社の本当の解雇の理由であると反論することができます。
例えば、解雇が懲戒解雇として有効である等と主張された事案について、大阪地判令和5年8月24日は、以下のとおり判断しています。
「前記前提事実(3)カのとおり、本件解雇の際に交付した労働契約終了通知書には、解雇理由として、アドテクノロジー製品開発の進捗が停滞しており、開発体制を再検討する旨が記載されているのみであり、原告の能力不足や経歴詐称を指摘する文言はないし、懲戒解雇に係る就業規則の条文の摘示もない。また、前記前提事実(4)イ、別紙2のとおり、本件解雇の約2週間後に交付された解雇理由証明書には、「解雇理由は、新製品開発の停滞により会社業績が悪化し、人員削減が必要になったため」と冒頭に記載した上で、その後の箇所で具体的な理由として、令和2年9月期において赤字決算となり、翌年9月期決算では会社業績がさらに大幅に悪化することが確実な状況であること、経費の大半が人件費であることを指摘した上で、原告が人員削減の対象となった理由として、本件製品専任であったこととプログラミングの基礎の習得が十分でないことが記載されており、以上の記載内容は本件解雇が整理解雇であることを強くうかがわせるものであるといえる。以上のとおり、本件解雇に伴って被告から原告に対して交付された文書からは、原告に対して企業秩序違反を指摘する記載が全くなく、かえって、整理解雇であることを強くうかがわせる記載があることからすると、本件解雇は普通解雇と解するほかなく、懲戒解雇の意思表示を含むものとは認められない。」
不当解雇の労働問題では会社の解雇の理由を特定させることが重要なため、解雇理由証明書の交付は、できれば、求めた方が良いです。
解雇理由証明書の交付はいつ求めた方がいい?
解雇理由証明書は、弁護士が代理人となって介入した後も、交付を求めることができます。
ですが、弁護士から解雇理由証明書の交付を求められると、本人から交付を求められた場合よりも、会社は、後に法的に解雇の効力が争われる可能性をより意識して、解雇の理由を記載する可能性があります。
そのため、まずは従業員がご自身で解雇理由証明書の交付を求めた方が良い場合が多いのではないかと思われます。解雇理由証明書があると、不当解雇の相談を受ける弁護士も、より具体的に見通しを検討しやすいのではないかと思われます。
解雇理由証明書にどういう記載をするよう求めた方がいい?
会社は、解雇理由証明書に、解雇の理由を具体的に記載する必要があります。
ですので、能力不足等の抽象的な記載ではなく、具体的な記載をするよう求めた方が良いです。具体的な記載をさせることで、解雇の理由もより具体的に知ることができます。
そうすることで、不当解雇か否かの判断もしやすくなり、労働審判や裁判等でも争点(ポイント)がより明確になります。
会社が解雇理由証明書を交付しない場合は?
会社が解雇理由証明書を交付しなかった場合、30万円以下の罰金の罰則が適用されます1。ですが、解雇理由証明書を交付しない会社もあります。その場合、労働基準監督署や弁護士等にご相談ください。
解雇のご相談は弁護士へ
不当解雇をされた場合、解雇の効力を争うときに、解雇の理由を特定することが重要になります。可能であれば、まずはご自身で、解雇理由証明書の交付を求めることもご検討ください。
解雇の理由を確認した上で、それでもなお不当解雇の効力を争いたい場合、弁護士へご相談ください。
当事務所も不当解雇の労働問題のご相談をお受けしています。「会社から不当解雇された場合の労働者の対応」もご覧ください。
- 労働基準法120条1項 ↩︎
