1 適応障害とは?
職場で働いている方の中には、体調を崩して、メンタルクリニックや心療内科等で適応障害との診断を受ける方がいらっしゃると思います。
適応障害とは、どういった病気なのでしょうか?
適応障害とは、人間関係や経済的問題等に伴う様々な心理社会的なストレス因を明らかな契機として、反応性に情動、認知、行動の各側面に様々な症状が現れ、生活、職業等に適応不全の状態が一定期間持続し、ストレス因がなくなるかその影響が小さくなれば軽快するという特徴をもつストレス関連精神疾患です1。
例えば、職場でいうと、長時間のサービス残業、上司からのパワハラ、過剰なノルマ等の過労による強い心理的負荷が発病の原因になり得ます。
適応障害の症状としては、不安や抑うつ、その他不眠、食欲不振、攻撃的行動、過剰飲酒や自殺企図などの様々な症状を含みます2。抑うつ等の様々な症状はうつ病、双極性障害や統合失調症等の他の精神疾患の症状にもありますが、適応障害は、うつ病等の他の病名の診断がつかない場合に、診断をすることができます。
適応障害は、周囲からも、病気とは気づきにくい側面があります。
適応障害の初期にははっきり病気だとわからずに職場での本人の意欲が無くなったように見え、他方で会社帰りの居酒屋では酒量が増えていたりすること等から、怠け者に見えてしまい、誤解も生まれやすいともいわれています3。
また、適応障害がストレス因を契機とした病気であるところ、ストレス因がない状況ではうつ状態がなくなり、自分の好きなことや楽しいことには気分ががらりと変わって元気になることもあること等から、周囲には病気には見えずに、自分勝手等と誤解されることもあるともいわれています4。
ですが、適応障害も精神疾患であり、症状として自殺企図が生ずることもあります。適応障害にり患して自死する方もいます。
適応障害は、他の診断がつかない場合に診断できることや、ストレス因がない状況では普通のように見えることもあること等から、軽い病気だと受け止められることもあると思われます。
しかし、ご本人の健康を考えた時には、決して軽視できません。
2 適応障害の診断を受けたら?
働かれている方が適応障害の診断を受けたら、適応障害の原因や、休職の要否、必要な場合の期間等について、主治医にご確認いただくのが良いと思われます。
適応障害は必ずしも職場が原因で発病するものではないですが、職場環境が原因の時は、職場環境が改善されない状況で出勤を続けると、病状が悪化する可能性がありますし、休職後復職しても再発する可能性があります。上司からのパワハラ等の過労が原因の場合には、対応を検討する必要があります。
3 休職中の生活費は?
職場以外が原因で適応障害になり休職した場合には、原則は、無給です(ノーワーク・ノーペイの原則)。会社から手当が支給されない場合には、健康保険の傷病手当金を受給することが考えられます。仕事上の原因によらない怪我や病気によって労働者が休職した場合の収入の確保をご覧ください。全国健康保険協会の案内も参考になります。
長時間労働、パワハラやセクハラ等の職場のストレス因が原因で適応障害になった場合には、労災保険の受給が考えられます。精神疾患の労災には対象となる疾病があるところ5、適応障害も補償の対象になります。労災認定を受けられれば、休業補償等の補償を受けられます6。適応障害を発病したことの労災申請の場合、長時間労働等の過重労働の証拠を集めることが重要です。
精神疾患の労災は申請から結果が出るまでにある程度の期間が必要なことや、証拠収集にも時間が必要なことから、まずは健康保険の傷病手当金の受給を検討することもあります。
過労による適応障害の労災申請等は、弁護士にご相談ください。当事務所もご相談をお受けしています。
- 尾崎紀夫他編.標準精神医学第9版.株式会社医学書院,2024.2,p.380 ↩︎
- 尾崎紀夫他編.標準精神医学第9版.株式会社医学書院,2024.2,p.381 ↩︎
- 貝谷久宜監修.新版適応障害のことがよくわかる本.株式会社講談社,2018.10,p.40 ↩︎
- 貝谷久宜監修.新版適応障害のことがよくわかる本.株式会社講談社,2018.10,p.32-33 ↩︎
- 精神障害の労災の対象となる精神障害について ↩︎
- 労災認定を受けた場合の補償の内容 ↩︎
