1 諭旨解雇(または諭旨退職)とは?
労働者が会社から諭旨解雇(ゆしかいこ)(または諭旨退職)を求められることがあります。
諭旨解雇とは、会社が社員に対して退職を勧告して、社員に退職願を提出させたうえで解雇又は退職扱いにすることをいいます1。
退職金が支給されることが多いけれども、退職金の一部又は全額が支給されないこともあります。また、諭旨解雇(諭旨退職)に応じない場合には、懲戒解雇が予定されていることが多いと言われていますし2、退職願の提出がなければ懲戒解雇とする処分と述べられることもあります3。諭旨解雇(又は諭旨退職)の場合、通常は、自己都合退職になると思われます。諭旨解雇は、通常、懲戒解雇に次ぐ重い懲戒処分として位置づけられていることが多いです4。
懲戒解雇は、退職金の一部又は全部が支給されないことが多いのではないかと思われます5。会社によっては、諭旨解雇(諭旨退職)と懲戒解雇とで、退職金の支給の有無、支給される場合の金額が違う可能性もあります。
退職を勧告して退職願を提出させる形式ですが、退職勧奨6とは区別が必要です。退職勧奨は懲戒処分としては位置づけられていませんが、諭旨解雇は、通常、懲戒処分として位置づけられています。無効か否かの判断方法も変わってきます。労働者のミスを理由とする強力な退職勧奨に応じて退職届が提出された事案について、諭旨解雇と捉えて、手続違反を理由に無効とした裁判例もあります7。
諭旨解雇(諭旨退職)を求められた場合には、諭旨解雇(諭旨退職)の内容を理解した上で、応ずるか否か判断する必要があります。
2 諭旨解雇に対する厳格な司法審査
諭旨解雇(諭旨退職)に対しては、重い懲戒処分として、厳格な司法審査が行われています。例えば以下の裁判例では、諭旨解雇が重すぎる処分として無効と判断されています。
平成17年7月25日東京地方裁判所判決労働判例901号5頁
「(1)原告が,過失によって,本件ビデオが実際には制作されておらず,本件ビデオ制作費の請求が架空なものであることに気付かず,被告に1000万円を超える損害を与えたこと,原告が,被告の内規等に違反して,D社を介在させること及びクライアントサービスとして行うことを歴代の営業局長に説明しなかったことが原告に対する諭旨解雇を相当とするような事由と認めることができるかどうかについて検討する。」
「(2)確かに,本件ビデオが実際には制作されておらず,本件ビデオ制作費の請求が架空なものであることを原告が知らなかったとはいえ,本件ビデオ制作費の負担によって被告に生じた損害は大きいし,原告がD社を介在させることを歴代の営業局長に説明せず,独断で決定したことにも少なからぬ問題があったといわざるを得ない。」
「(3)しかしながら,甲13,乙13ないし15,E,Iの各証言,原告本人尋問の結果,弁論の全趣旨によれば,
A美容は原告が新規に開拓した顧客であり,原告は,Bと非常に懇意にしていたこと,A美容に対する営業は,当初はKと原告,その後はKの後任のEと原告によって行われていたが,重要な事項に関しては,もっぱら原告がBとの間で決定しており,KやEは,原告が決定した方針に従って現場進行や会計処理の業務を行っていたにすぎないこと,歴代の営業局長は,このような状況を認識した上で,A美容に対する売上も順調に伸びていたことなどの事情から,原告のA美容に対する営業活動に関してはこれを信頼して,原告に任せていたことが認められる。」
「(4)しかも,被告には,前記前提事実(8)のような業務権限規程があるとはいえ,乙13,14,E,Gの各証言によれば,被告においては,営業部長が現場の営業業務を管理,統括する責任者と認識されており,営業局長による受注書の決裁に関しても,明らかな不正や不備があればともかく,当該取引における被告の利益率を確認,検討するためのものとしてしか機能しておらず,1件1件の詳しい確認は営業部長が行い,営業局長はこのような確認をしないのが通例とされていたと認められるのであって,もともとこのような被告の決裁制度には不十分な点があったといわざるを得ない。」
(略)
「(6)また,甲13,乙9,Eの証言,原告本人尋問の結果によれば,原告が新規に開拓した当初のA′(ママ)美容との取引においては,F企画とのマージン折半やスポットCMの本数をサービスするといったクライアントサービスを行っていた関係で被告の利益率も低かったが,Bから,F企画とのマージン折半の解消と発注額の増加を条件として,本件ビデオ制作費を被告において負担して欲しいという話を持ちかけられ,原告がこれを受け入れた以降は,被告の利益率も増え,A美容に対する被告の売上も順調に増加したことが認められる上,A美容との広告宣伝に関する取引に関しては,平成12年度の売上高が約3億8000万円(利益約5000万円)であったのに対して,平成14年度には売上高が約9億円(利益約1億2000万円)に増加したことは前記前提事実(2)のとおりである。
そうすると,原告が担当するA美容との取引によって被告が多大の利益を得ていたことも明らかである。」
(略)
「(7)このような事情に,原告が過去に懲戒処分を受けた経歴があるとも認められないことを考え合わせれば,前記(1)のような事由を理由として原告を諭旨解雇とすることは,懲戒処分として重きに失しているといわざるを得ず,客観的合理性を欠き,社会通念上も相当性を欠くというべきである。」
3 さいごに
諭旨解雇(諭旨退職)を求められている、されてしまった場合には、弁護士にご相談ください。
当事務所もご相談をお受けしています。
