1 採用内定の取消し
労働問題の一つとして、就職先の都合で、採用内定の取消しがなされることがあります。採用内定を取り消された場合、これに従うしかないのでしょうか。
大日本印刷事件判決1は、内定の実態が多様であるため具体的な事実関係に即してその法的性質を判断しなければならないと述べた上で、当該事案において、採用内定通知のほかには労働契約締結のために特段の意思表示をすることが予定されていなかったことから、会社からの募集に対して大学卒業予定者が応募したのが労働契約の申込みであり、これに対する会社からの採用内定通知が承諾であって、会社と大学卒業予定者との間に始期付き解約権留保付きの労働契約が成立したと判示しました2。
そうして、最高裁判所は、個別具体的な事案によって判断が異なり得るとした上で、当該事案では、留保された解約権(内定の取消し)の行使が客観的に合理的で社会通念上相当として是認することができる場合に限り認められると判断しました3。
上記大日本印刷事件判決は、次のように判示して、内定の取消しが解雇権の濫用にあたると判示しました。
「これを本件についてみると、原審の適法に確定した事実関係によれば、本件採用内定取消事由の中心をなすものは「被上告人はグルーミーな印象なので当初から不適格と思われたが、それを打ち消す材料が出るかも知れないので採用内定としておいたところ、そのような材料が出なかつた。」というのであるが、グルーミーな印象であることは当初からわかつていたことであるから、上告人としてはその段階で調査を尽くせば、従業員としての適格性の有無を判断することができたのに、不適格と思いながら採用を内定し、その後右不適格性を打ち消す材料が出なかつたので内定を取り消すということは、解約権留保の趣旨、目的に照らして社会通念上相当として是認することができず、解約権の濫用というべきであり、右のような事由をもつて、本件誓約書の確認事項二、「5」所定の解約事由にあたるとすることはできないものというべきである。」
以上のように、会社の都合で採用の内定が取り消された場合、内定の取消しは、客観的に合理的で社会通念上是認することができないときには、違法となる可能性があります。
2 さいごに
なお、上記の最高裁判所の判断が転職を重ねてきた中途採用者等にも同様に当てはまるのかは、個々の事案の個別の契約の解釈の問題であるとされています。裁判例の中には、中途採用者の採用内定にも、上記の最高裁判所と同様の考え方を示したものもあります4。
採用内定の取消しに納得できない場合、弁護士にご相談ください。
当事務所もご相談をお受けしています。
