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試用期間満了時の本採用拒否や試用期間中の解雇について

2025 7/19
労働問題 労働契約締結に関する問題(労働契約成立・労働条件、採用内定取消、本採用拒否等)
2025年7月19日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

第1 試用期間とは?

 会社が労働者を採用するに際して、労働者の能力や適性をみるために、一定期間の試用期間が設定されることがあります。

 雇用契約書や労働条件通知書があれば通常試用期間が明記されていると思われますし、例えば、就業規則に以下のような規定が設けられていることもあります。

 「従業員は、採用した日から〇カ月間を試用期間とし、試用期間が終了し会社が認めた場合は本採用とする。ただし、会社が特に認めた時はこの期間を短縮すること、又は設けないことがある。」1

 試用期間は、2か月や3か月等、一定の期間が設定されます。

第2 試用期間中の本採用拒否とは?

 試用期間付きの労働契約は、使用者に労働者の不適格性を理由とする解約権が留保されていると考えられています。

 ですが、使用者がいかなる場合も解約権を行使できるわけではなく、試用期間満了時の本採用の拒否や、試用期間中の解雇等の留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨・目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合にのみ許されます。

 三菱樹脂事件・昭和48年12月12日最高裁判所大法廷判決、最高裁判所民事判例集27巻11号1536頁は、以下のとおり判示しています。

 「法が企業者の雇傭の自由について雇入れの段階と雇入れ後の段階とで区別を設けている趣旨にかんがみ、また、雇傭契約の締結に際しては企業者が一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあることを考え、かつまた、本採用後の雇傭関係におけるよりも弱い地位であるにせよ、いつたん特定企業との間に一定の試用期間を付した雇傭関係に入つた者は、本採用、すなわち当該企業との雇傭関係の継続についての期待の下に、他企業への就職の機会と可能性を放棄したものであることに思いを致すときは、前記留保解約権の行使は、上述した解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解するのが相当である。換言すれば、企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至つた場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。」

第3 本採用拒否や試用期間中の解雇の裁判例

 本採用拒否や試用期間中の解雇の有効性が問題となった裁判例は複数あります。

 例えば、平成24年8月23日東京地方裁判所判決労働判例1061号28頁は、本採用拒否が無効と判断された事例です。当該裁判例では、3つの解約理由が検討されています。

 1つ目の解約理由の検討は、以下のとおりです。

 「被告主張に係る本件解約理由①が,被告就業規則61条2号(「社員の勤務成績が著しく不良で就業に適さないと認められる場合」)に該当するか否かが問題となる。
 b そこで検討するに,確かに,・・・原告は,保険業界における即戦力として期待され入社したものの,被告が期待していたほど,各保険会社の商品設計ソフトや保険商品についての知識を有していなかった上,保有する潜在的な顧客の数も100人程度と少なかった。また,その保険営業マンとして活動も積極さに欠け,単なる挨拶回り程度のものに終始し,生命保険募集人の資格取得後に備え,実質的な成約を取り付けるなどといった発想はみられなかった。
 しかし,原告は,上記のとおり保険営業の「経験者」として被告に中途採用されたものであるとはいえ,試用期間を不要とするほどの「特定の技能又は経験を有する者」(被告就業規則9条1項ただし書)として入社したわけではなく,現に,その給与(基本給)も高額ではない。被告の原告に対する即戦力としての期待にも一定の限度があるといわざるを得ない。
 そもそも・・・原告は,入社後直ちに研修を開始し,被告の指示に従って,社内で専門誌2誌を読み,そのレポートを作成したほか,後の保険営業活動に備え「税理士名簿」を作成,提出するとともに(甲55),被告会社のBから保険会社や保険商品の研修を受講し,「各保険会社の研修を受けて」と題する書面を作成,提出した上,予め求人募集において特記された期間(1か月)よりも短い「3週間」程度で研修を終えているばかりか,上記研修の終了後その翌日(平成21年12月2日)から速やかに保険営業に着手し,同月18日までの間(営業日数13日)に,上記「税理士名簿」に記載のある会計事務所の殆どを訪問しているほか,その間に生命保険募集人の登録を得るための試験を受験,合格し,登録・募集活動を行い得る資格を取得している。そうだとすると僅か2週間にも満たない営業日数(13日)を前提に,その勤務状況等から保険営業マンとして資質・能力が著しく劣っているものと評価することは困難であるといわざるを得ず,現に,・・・被告は,本件各団体交渉においても,その議題として,原告の保険営業マンとしての能力の低さを問題とする姿勢を示していない。
 c 以上の認定によると被告が問題視する原告の保険商品等に対する知識の乏しさや潜在的顧客数の少なさ等は,本件試用期間が実験・観察期間としての性格を有することを考慮に入れたとしても,原告の「勤務成績が著しく不良で就業に適さない」ものであることを基礎付けるに足るものではない。
 よって,本件解約理由①は,被告就業規則61条2号には該当せず,本件解約権行使の合理性を根拠付けるものではない。」

 2つ目の解約理由の検討は、以下のとおりです。

 「被告主張に係る本件解約理由②が被告就業規則61条4号(「当社社員として不適格と認められた場合」)に該当するか否かが問題となる。
 b そこで検討するに,・・・原告が被告の上記主張事実に沿う行動に出ていたことは事実のようである。確かに,被告の中小零細企業としての社風等を考慮すると前記基礎事実(4)で認定した原告の言動を到底容認し難いものとする被告の主張は理解できないではない。
 しかし,本来,通勤経路やその方法の選択であるとか,社内清掃や休日出勤にどの程度協力するかといった問題は,基本的に労働者の自主的な判断に委ねられている事項である。また就業時間中,被告から貸与されたパソコンを使用して内部告発文書を作成したことについても,その動機・目的,内容,態様等いかんによっては被告に対する職務専念義務に違反しない場合もあり得るのであって,これを一概に非難し,社員としての不適格性判断に結び付けるのは適当ではない。そうだとすると本件試用期間が実験・観察期間であることを考慮に入れたとしても,当裁判所が認定した前記基礎事実(4)(被告の上記主張事実)だけでは,原告が「当社社員として不適格」であると判断するに足りないことは明らかである。
 c よって,本件解約理由②は,被告就業規則61条4号には該当せず,本件解約権行使の合理性を根拠付けるものではない。」

 3つ目の解約理由の検討は、以下のとおりです。

 「被告主張に係る本件解約理由③が被告就業規則61条4号(「当社社員として不適格と認められた場合」)に該当するか否かが問題となるところ,本件解約理由③は,本件各解約理由のうち最も結論(判断)の分かれ得る解約理由である。

 b ・・・本件休職中における原告の対応や本件伝言の内容は,本件休職合意を無視するものであって,被告との信頼関係を害し,被告社員としての協調性等を疑わせるものであったといわざるを得ない。

 すなわち被告代表者による本件各選択肢の提示は,一種の退職勧奨を伴うものであるところ,上記基礎事実(5)ウ,(6)ア及びイからみて,その提示方法等にはやや強引なところが認められる。しかし原告は,渋々ながら被告代表者からの本件休職合意に関する提案を受け容れ,その日の午後から休職に入っているのも紛れもない事実であって,原告と被告との間において本件休職合意が成立したことは,もはや否定し難い事実である。そうだとすると原告は,本件休職合意の提案に応じた以上,その内容からみて,これに伴う誠実義務の一環として,使用者である被告に対し,適宜,本件休職の原因となった自らの体調(病状)とその回復具合いのほか,受働(ママ)喫煙との関係ないしはその診断結果等について報告する義務を負っていたものといわざるを得ない。ところが原告は,受動喫煙に関する専門医の診察予約が取れているにもかかわらず,1か月間近くにもわたって,被告に対し,上記の診察予約の点や体調の回復状況について全く連絡を入れなかったばかりか,その休職期間の終了間際になって漸く電話連絡を入れ,被告代表者に対し,あたかも自己に有利な専門医の診断結果が出るまで休職を続け,しかも,その間の給与支払も請求するかのような内容の伝言(本件伝言)を行い,それ以外には被告に対して連絡を取ろうとはせず,そのまま本件試用期間の終期を向かえたことが認められる。

 以上のような原告の対応は,本件休職合意を一方的に破棄する行為に近いものであって,被告使用者との信頼関係を失わせるものであるばかりか,被告社員としての協調性や基本的なコミュニケーション能力にも疑念を生じさせるものであって,本件試用期間が実験・観察期間としての性格を有するものであることを併せ考慮するならば,原告の上記対応は,解約権留保の趣旨・目的に照らして,原告が「当社社員として不適格」であることを根拠付けるに足るものであると評価するのが相当である。   

 よって,上記基礎事実に沿う内容の本件解約理由③は,被告就業規則61条4号に該当する。

 (エ) 以上によれば,本件解約権行使は,解約権留保の趣旨・目的に照らし客観的に合理的な理由があるものと認められ,よって,適法要件Aを満たす。」

 その上で、当該裁判例は、次のとおり判示しています。

 「上記のとおり本件解約権行使は,解約権留保の趣旨・目的に照らし客観的に合理的な理由があるものと認められる。
 そこで問題は,本件解約権の行使は「解約権留保の趣旨・目的に照らして,社会通念上相当として是認される」かであるが,この適法要件Bの有無は,解約権の留保の趣旨・目的に照らしつつ,①解約理由が重大なレベルに達しているか,②他に解約を回避する手段があるか,そして③労働者の側の宥恕すべき事情の有無・程度を総合考慮することにより決すべきものと解される。

 (イ) 上記イ(ウ)で検討したとおり本件解約理由③における原告の対応(以下「原告の本件対応」という。)は,単に雇用契約上の誠実義務に反するだけでなく,被告社員としての協調性や基本的なコミュニケーション能力にも疑念を生じさせるものであることは否定し難い。
 しかし前記基礎事実(2)ないし(5)に基づき,より事件の経過や実態等に即して考察すると,原告の本件対応には以下の背景的事情を指摘することができる。すなわちA社長は,原告が保険営業マンとして期待していたほどの能力等を有していなかった上,被告の社風からみて協調性に欠けるものとしか思えない言動が散見されたことから,それにもかかわらず,受働(ママ)喫煙の影響をうかがわせる他覚的所見を提出しないまま分煙措置の徹底を求めて譲らない原告を疎ましく思うようになり,原告に対し,本件各選択肢を提示するなどして,かなり強引な退職勧奨を行い自主退職を迫ったが,本件休職合意に応じてもらうのがやっとであったため,休職に入ろうとしている原告から貸与中の被告事務室の鍵やパソコンを取り上げ,事実上,被告事務室への立入を禁じるに等しい措置をとっていたことが認められる。
 そうだとすると原告の本件対応の背景には,被告営業マンとしての能力や受動喫煙等をめぐる被告代表者と原告との確執,被告代表者の原告に対する強引な退職勧奨と被告事務室からの事実上の締め出し行為等が伏在しており,これらの事情が原告から被告代表者に対する病状報告等適切なコミュニケーションをとる機会を奪い,原告の本件対応を惹起させる原因の一つとなっていたともみることができ,してみると原告の本件対応それ自体は,原告が保険営業マンとしての資質,能力等に大きな問題を有していることを必ずしも十分に推認させるものではない。
 (ウ) 以上によると本件解約権行使を基礎付ける事情(本件解約理由③)は,解約事由として重大なレベルに達していたと認めるには十分ではなく,また労働者である原告には宥恕すべき一定の理由も存在していたといわざるを得ない(上記要素①③)。そうすると,本件解約権の行使が正当化されるためには,通常の解雇ほどではないにしても,それ相応の解約回避のための措置が採られていることが必要と解されるところ(要素②),前記基礎事実(6)イで認定したとおり被告代表者は,本件休職合意によりその期間が終了する直前に,本件伝言を受け取り,その内容から見て原告には復職の意思が全くないものと決め付け,その日のうちに,原告に対し,本件解雇通知を郵送している。しかし本件伝言には原告の復職意思の喪失をうかがわせる記載はなく,また上記のとおり原告は,被告代表者からのかなり強引な退職勧奨を受け,これを明確に拒絶した経緯が認められるのであるから,本件伝言や原告の本件対応の内容等からみて直ちに原告には全く復職の意思がないものと即断したのは,やはり早まった判断であったといわざるを得ない。

 確かに原告は,本件伝言をした時点で,被告に対して,受動喫煙の影響について他覚的知見といい得るものは何も提出していないばかりか,この点に関する見通しすらも十分に報告していない。しかし,その一方で,原告が被告代表者等からの受動喫煙に曝される場所で被告の保険業務を行っていたことは紛れもない事実であるから,被告代表者は,使用者の責務として(労契法5条),他覚的知見の提出の有無にかかわらず,原告に対し,より積極的に分煙措置の徹底を図る姿勢を示した上,あくまで保険営業マンとしての就労を促し,その勤務を続けさせ,その中で,改めて体調の回復具合や保険営業マンとしての能力,資質等を観察し,被告社員としての適格性を見極める選択肢もあることに思いを致す必要があったものというべきである。ところが被告代表者は,上記(イ)で指摘したとおり原告を疎まし思う余り,上記のような選択肢の存在に全く思いを致すことなく,原告が本件休職合意を選択したのを機に,事実上とはいえ原告を被告事務所から締め出すに等しい措置を講じるとともに,原告に本件伝言等の対応(原告の本件対応のこと)の拙さが認められるや直ちに,間髪を入れず,原告に対し,本件解雇通知を発し,本件解約権を行使したものである。してみると以上のような被告の判断は,如何にも拙速というよりほかないものであって,そうである以上,本件解約権行使は,これを正当化するに足る解約回避のための措置が十分に講じられていなかったものといわざるを得ない。

 (エ) 以上によれば,本件解約権の行使は,解約権留保の趣旨・目的に照らして,社会通念上相当として是認される場合には当たらず,よって,適法要件Bを満たさない。

 エ 小括
 以上の次第であるから,本件解約権の行使は,解約権の留保の趣旨・目的に照らし,客観的に合理的な理由が認められるものの,社会通念上相当として是認され得る場合には当たらず,したがって,その権利を濫用したものとして,無効であることに帰着する。」

第4 本採用拒否や試用期間中の解雇をされたら

 本採用拒否や試用期間中の解雇をされ、その効力を争う必要がある場合、弁護士にご相談ください。

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    1. 社労士就業規則実践研究会.最新企業実務に即したモデル社内規程と運用ポイント.株式会社労働新聞社p.15 ↩︎
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