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【不当解雇等】懲戒解雇と退職金請求の可否の裁判例

2026 2/22
労働問題 賃金に関する問題(未払賃金、賞与、残業代等)
2026年2月22日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

1 懲戒解雇と退職金請求の可否

 退職金については、就業規則等に、懲戒解雇された者等に対して退職金を支給しない、減額するといった規定が置かれていることが多いです。

 会社から退職金を支給されなかった場合や、減額された場合、懲戒解雇された労働者等が、会社に対して、支給されるはずの退職金の支払いを求めて、労働問題に発展することがあります。

 実務上、一般に、退職金は、賃金の後払的性格をもつと同時に功労報償的性格をあわせもつものであるから、功労の抹消に応じた減額や不支給の規定も合理性がないとはいえないとしつつ、規定の適用において、規定の趣旨・目的に照らして、過去の功労の抹消の程度に応じた限定解釈を行うものが多いです1。

 小田急電鉄(懲戒解雇)事件は、懲戒解雇と退職金請求の可否について判断された裁判例の一つです。

2 小田急電鉄(懲戒解雇)事件・2023年12月19日東京地方裁判所判決労働判例1311号46頁

⑴ 事案の概要

 本件判決の事案は、小田急電鉄株式会社を懲戒解雇された原告が、小田急電鉄株式会社に対して、退職金等の支払を請求した事案です。

 原告は、覚醒剤所持と使用を理由に、懲戒解雇されました。

 小田急電鉄株式会社の規則は、以下のとおりでした。

 従業員就業規則78条 社員は、退職に際して、別に定める退職金支給規則によって、退職金を支給される。

 退職金支給規則12条 懲戒解雇により退職する者、または在職中懲戒解雇に該当する行為があって、処分決定以前に退職する者には、原則として、退職一時金は支給しない。

 原告には、退職金の全部が支給されませんでした。

⑵ 裁判所の判断

 「被告の退職金支給規則(乙3)及び弁論の全趣旨によれば、被告においては従業員の資格及び役割に応じて1年を単位に月割で付与される退職金付与ポイントを基礎として退職一時金、確定給付企業年金等の額が定められる仕組みとなっており、退職金は後払的性格を有していると認めることができる。こうした退職金の性格に鑑みれば、(略)退職金支給規則等に基づき退職金を不支給とすることができるには、当該従業員のそれまでの勤続の労を抹消してしまうほどの不信行為があった場合に限られると解すべきである。」

 「本件犯罪行為は、(中略)相当重い犯罪類型に該当する。」

 (中略)

 「事態を重く見た被告が、延べ758名に対し延べ211時間10分もの時間をかけて再発防止のための教育措置をとったこと(乙15)は相当であ」る。

 「以上の社内的影響に加え、被告は監督官庁に本件を報告しており(弁論の全趣旨)、限られた範囲ではあるが外部的な影響も生じている。」

 (中略)

 「原告は、令和4年5月に3日間の無断欠勤や虚偽報告を理由に課長訓戒の処分を受けた(乙9、10)ほか、事前連絡の有無等は必ずしも明らかではないものの、体調不良等の自己都合での突発的な休暇取得が頻繁に認められる(乙7、23、原告本人)。(中略)原告の勤怠状況について積極的に評価することは困難であり、この点において原告に有利な事情があるとはいえない。」

 「原告について、本件以外に上記の課長訓戒以外の処分歴や犯罪歴は認められないものの、27年間勤務を続けていたという以上に、特に考慮すべき功労を認めるに足りる証拠は見当たらない。」

 (中略)

 「以上によれば、本件犯罪行為は、原告の永年勤続の功労を抹消するほどの不信行為というほかなく、退職金の全部不支給は相当である。」

3 さいごに

 本件判決は事例の一つであり、事案が異なれば、判断も変わります。例えば、社内で再発防止のための教育措置をとらなかった場合、監督官庁に報告しなかった場合や、原告に特に考慮すべき功労があった場合は、判断が変わっていた可能性があります。

 当事務所も、退職金の不支給や減額の労働問題の法律相談をお受けしています。

    1. 水町勇一郎.詳解労働法第3版.一般財団法人東京大学出版会,2023.9,p.639 ↩︎
    労働問題 賃金に関する問題(未払賃金、賞与、残業代等)
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