大阪地裁平成30年5月29日判決(労働判例1210号43頁)は、パワハラによるうつ病について損害賠償請求が認められた事例です。
本件は、パチンコ店等の経営を目的とする株式会社の従業員であった被災者が、被告における上司であった班長から継続的にパワハラを受けて、うつ病に罹患し、退職を余儀なくされたと主張して、被告に対して、使用者責任(民法715条)又は債務不履行(安全配慮義務違反・民法415条)に基づき、約1500万円の損害賠償請求をした事案です(なお、被災者は、某株式会社の某店舗のアルバイトして採用され、その後正社員になったところ、被告は、某株式会社を吸収合併しています。)。
争点は、班長によるパワハラの有無、店長によるパワハラ容認の有無、これらと被災者のうつ病との因果関係の有無、被告の法的な責任の有無等でした。
結論としては、損害としては、約1780万円の休業損害(平成24年10月から平成30年3月までの期間分)と300万円の慰謝料が認められ、そこから25%の素因減額がなされ、労災休業補償給付金が充当され(差し引かれ)ています。その結果、合計約520万円の損害になりました。併せて、弁護士費用相当額が加算され、損害の合計額は、約570万円とされました。
【パワハラ等の有無】
班長によるパワハラの有無や、店長による容認の有無は、次のとおり判断されています。
「原告のうつ病発症前6か月間を検討するに,平成24年4月に本件店舗に転入したC班長は,原告の勤務態度を問題視して降格的配置をしたり,叱責を繰り返したばかりか,とりわけ,同年7月15日,本件店舗の経験の長い原告がC班長と対立した際には,「お前もほんまにいらんから帰れ。迷惑なんじゃ。」と発言して,パチンコ台の鍵を取り上げようとし,同年9月6日には,「お前をやめさすために俺はやっとるんや。店もお前を必要としてないんじゃ。」と発言して,スピーカー線破損の始末書作成を強要し,同年10月2日には些細な指示命令違反の有無を捉えて,「嘘つけ。お前いうこと聞かんし。そんなんやったらいらんから帰れや。」と発言した上,反抗に対する懲罰として,原告を約1時間にわたって,カウンター横に立たせたこと(以下「本件パワハラ行為」という。)は,業務指導の域を超えた原告に対する嫌がらせ,いじめに該当し,その発言は,原告の人格を否定するような内容であって,パワハラに該当する。
そして,F店長は,上記のようなC班長の原告に対する嫌がらせを把握できる状況にありながら,C班長に対して有効な指導をすることはなかった。」
【会社の使用者責任】
「前記1(1)の認定事実によれば,本件パワハラ行為は,被告の本件店舗従業員であるC班長が,その業務を行う中で,その部下である原告に対して,指示・指導等として,行われたものであるから,被告の事業の執行についてされたものであり,被告は,使用者責任を負う。」
会社の使用者責任が認められ、請求が認められることから、安全配慮義務違反については判断されませんでした。
【パワハラ等とうつ病との因果関係】
「証拠(甲2~4,8,9,25,乙13)によれば,ICD-10のF2~F4に分類される精神疾患の発病に至る原因としては,環境由来の心理的負荷(ストレス)と個体側の反応性・脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まり(ストレス-脆弱性理論),発症前おおむね6か月の強い心理的負荷と上記精神疾患発症との間には因果関係が認められるところ,前記1(1)の認定事実及び前記2(1)アの判示によれば,本件パワハラとうつ病の発症との間には相当因果関係が認められる。」
本件では、平成25年に労災認定されていました。労災手続では、大阪労働局地方労災委員協議会精神障害等専門部会は、大阪労働局長宛に、班長による嫌がらせや暴言等によって業務による心理的負荷の強度が「強」と判断される等の内容の意見を述べていました。労災認定の根拠資料も、有力な証拠になったと思われます。
このように、一般論としては、労災認定を得ることで、会社への損害賠償請求を進めやすくなります。
しかし、まずは労災申請をするにしても、労災申請を経ずに会社に対して損害賠償請求をするにしても、いずれにしても、パワハラによるうつ病や過労自死の場合、立証方法(証拠集め)を十分に検討する必要があります。
