大阪地裁令和8年5月14日判決は、トラックドライバーの残業代等の請求が認められた事例です。
本件判決の事案では原告が2名いました。
1人には、売上の4割から高速代の半分を控除し、さらに基本給等を控除した額の金員を、給与明細上、「時間外手当」の名目で支払われていました。
もう1人には、売上の3割から基本給等を控除した額の金員を、給与明細上、「残業代」又は「時間外手当」の名目で支払っていました。
そこで、このような「時間外手当」が残業代等の支払いに当たるか否かが争点となっていました。
本件判決は、以下の内容等を述べて、残業代等の支払いに当たらないと判断しました。
「ア 雇用契約に係る契約書等の記載内容
本件各労働契約の労働条件に係る資料は、令和6年1月1日付け労働条件通知書(甲2、3)以外になく(中略)、上記労働条件通知書には時間外手当という記載があるものの、その計算方法は記載されていない。
したがって、本件各労働契約について、「時間外手当」が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていたことを示す契約書等の書面はない。」
「イ 被告の原告らに対する「時間外手当」等に関する説明の内容
(中略)
原告らと被告代表者との間で被告代表者が供述するようなやりとりがされたことを直接的に裏付ける証拠はなく、上記のとおり、本件各労働契約の締結当時、上記供述と整合する内容の労働条件に関する資料が作成された事実もない。確かに、被告が原告らに交付した給与明細には「時間外手当」の名目が記載されているものの、給与明細における賃金の名目は被告が決定できるものであり、原告らは、給与明細の「時間外手当」という記載は歩合給の書き方の問題であると説明され、「時間外手当」に記載された賃金は歩合給であると認識していた旨供述するところ、本件における「時間外手当」の算定方法からすれば、その供述内容がおよそ不合理ということはできないから、給与明細上の記載をもって、原告らと被告代表者との間で被告代表者が供述するようなやりとりがされたことが裏付けられるとはいえない。
(中略)
これらの事情を考慮すると、被告代表者の上記供述を採用することはできず、原告らと被告代表者との間で「時間外手当」を残業代として支払うとのやりとり又は説明がされたとは認められない。」
「ウ 原告らの実際の労働時間等の勤務状況
基本給等のみが通常の労働時間の賃金であり「時間外手当」は時間外労働等に対する対価として支払われるものと仮定すると、まず、被告が原告Aに対して支払った「時間外手当」については、支給額が平均27万3255円(1円未満四捨五入。以下同じ。)であり(別紙5「原告A 単価シート」)、基本給等の合計20万円を月平均所定労働時間173.8時間で除した1151円を1.25倍した1時間当たりの割増賃金額は1439円となるから、平均約190時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当し、対応する時間外労働時間数が極めて多い。また、原告Aの1か月当たりの時間外労働は平均して約100時間であるから(別紙1「原告A 金額シート」「法外残業(1.25)」欄)、「時間外手当」が対応する時間外労働時間数は実際の労働時間の状況とも大きくかい離するものである。
(中略)
このような「時間外手当」の対応する時間外労働時間数の多さや、実際の労働時間とのかい離の状況は、「時間外手当」に時間外労働等以外の対価が含まれることをうかがわせる事情と評価される。」
「エ その他の事情
このほか、「時間外手当」という手当の名称は、これが時間外労働等に対する対価であることをうかがわせる事情であるが、上記のとおり、給与明細における賃金の名目は被告が決定できるものである上、手当の名称は飽くまでも手当の実質に関する考慮要素の一つであって、名称のみで手当の実質が定まるものではない。
他方、各原告の「時間外手当」の算定方法は、労働時間に基づくものではなく、通常の労働時間における労働によっても生じる売上に基づくものであるところ、このような「時間外手当」の算定方法は、「時間外手当」に時間外労働等以外に対する対価が含まれることをうかがわせる事情と評価される。」
「時間外手当」が残業代等の支払いにあたると評価されれば、使用者は、既にその分の残業代等を支払っていることになります。他方で、「時間外手当」が残業代等の支払いに当たらないとすると、使用者は、その分の残業代等を支払っていないことになります。【残業代請求】固定残業代とは?会社が固定残業代を払ってるといって、残業代の支払いに応じない?もご覧ください。
なお、本件判決では、「時間外手当」は、出来高払制賃金に当たると判断しています。【残業代請求】残業代請求等における割増賃金についてもご覧ください。
