職場が原因のうつ病や過労自死等について、民間労働者の労災、地方公務員の公務災害、国家公務員の公務災害について、それぞれ、認定基準等が策定されています。
地方公務員の公務災害の場合、地方公務員災害補償基金(の各都道府県の各支部)以下の通達に基づいて、公務災害に当たるか否かが判断されます。
①精神疾患等の公務災害の認定について(平成24年3月16日地基補第61号。第3次改正令和6年3月22日地基補第132号)1
②「精神疾患等の公務災害の認定について」の実施について(平成24年3月16日地基補第62号。第3次改正令和6年3月22日地基補第133号)2
③精神疾患等の公務起因性判断のための調査要領について(平成24年3月16日地基補第63号。第3次改正令和3年3月10日地基補第93号)3
地方公務員の公務災害の認定基準は、民間労働者の労災の認定基準4と違う部分があります。公務災害の補償を受けるには、まずは、公務災害の認定基準を満たすかを検討する必要があります。
なお、裁判においては、裁判所は、公務災害の認定基準のみに拘束されるものではないとされています。
例えば、福岡地裁令和7年12月5日判決(労政時報4118号16頁)は、地方公務員の過労自死について、次のとおり述べています。
「1 公務起因性の判断枠組み
(1) 地方公務員災害補償法に基づく補償は、地方自治体等の職員に公務上の疾病、死亡等の事由が生じた場合に実施されるところ(同法24条1項)、職員の疾病等が公務上のものと認められるためには、公務と疾病等との間に法的にみて上記補償を認めるのを相当とする関係(相当因果関係)が認められることが必要であるものと解される。そして、地方公務員災害補償制度が、公務に内在する危険の現実化として職員に疾病等の結果がもたらされた場合には、当該職員の属する地方公共団体等に過失がなくともその危険を負担させ、地方公共団体等の費用負担により運営される被告(同法49条1項)に当該職員への補償を代行させる(同法1条)という危険責任の法理に基づく制度であることに鑑みると、上記公務と疾病等との間の相当因果関係の有無は、当該疾病等が公務に内在する危険の現実化として発症したと医学的経験則に照らして評価し得るか否かによって決することが相当である。
(2) そして、認定基準は、被告の内部基準であり、裁判所の判断を拘束するものではないが、その内容は、当時の最新の医学的・専門的知見を集積した「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(令和2年5月)」(甲16)の内容等を踏まえ、その後も適時に改正されている労働者災害補償保険法上の業務起因性の有無の判断に関する厚生労働省策定の通達の内容に準じたものであり、精神的又は肉体的負荷による精神疾患等の発症機序や公務との関連性に関する標準的な医学的知見・経験則が反映された相応の合理性を有するものであるといえるから、地方公共団体等に属する職員の精神疾患等の公務起因性の法的判断においても、まずは認定基準の内容を参考としつつ、当該職員が精神疾患等を発症し死亡に至るまでの個別具体的な事情を総合的に考慮して、それらの公務起因性を判断するのが相当であるものと解される。」
地方公務員災害補償法の解説でも、労災の認定事例や、国家公務員の公務災害の認定事例等が参考にされる等して、個々の事例について具体的妥当性の検討がなされるべきであるとされています5。
とはいえ、上記の裁判例でも、「まずは認定基準の内容を参考としつつ」と述べられており、まずは、公務災害の要件を満たすかを検討することが肝要です。
うつ病や過労自死等といった地方公務員の公務災害は、弁護士にご相談ください。
- https://www.chikousai.go.jp/reiki/pdf/h24ho61.pdf ↩︎
- https://www.chikousai.go.jp/reiki/pdf/h24ho62.pdf ↩︎
- https://www.chikousai.go.jp/reiki/pdf/h24ho63.pdf ↩︎
- https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html ↩︎
- 地方公務員災害補償制度研究会編著『三訂版地方公務員災害補償法逐条解説』51頁(株式会社ぎょうせい、平成30年)、地方公務員災害補償制度研究会編著『地方公務員災害補償法逐条解説改訂版』45頁(株式会社ぎょうせい、平成13年) ↩︎
