東京地裁平成27年8月7日判決(労働経済判例速報2263号3頁)は、過去のパワハラを理由とした降格処分が有効とされた事例です。
事案としては、会社に所属する労働者が、過去のパワハラを理由とした降格処分を違法無効として、無効の確認を求めた事案です。
時系列は、以下のとおりです。
平成3年12月 原告は、被告に入社した。
平成25年3月 原告は、降格処分を受けた。
降格処分を受ける直前は、「理事(8等級)、担当役員補佐兼丸の内流通営業部長」という地位にあった。
降格処分によって、「副理事(7等級)、担当部長(一般仲介事業グループ担当役員特命事項担当)」という地位に降格した。
降格処分(懲戒処分)の該当事由としては、多くの従業員に対し、パワハラに該当する行為を行ったことが挙げられていた。
当該判決では、以下の内容等が述べられています。
【パワハラの存否】
以下の内容等、多数のパワハラの存在が認められています。
「同年10月25日、同年11月29日にB氏に対する「個人面談」が行われた。同年10月25日には以下の発言があった。
原告「おまえ子供幾つだ」
B氏「10歳です」
原告「それくらいだったらもう分かるだろう、おまえのこの成績表見せるといかに駄目な父親か」
原告「上司に圧力をかけておまえにプレッシャーをかけることもできるんだぞ」」
「C氏は、平成23年9月6日、常務室で行われたA常務及び原告による「個人面談」で、A常務からは「3月までにできなければ辞めると書け」、「3000万のところ2800万にまけておいてやる」と言われ、原告からも「やれる自信がある奴はみんな書くんだ」と言われ、やむなく「2800万円できなければ、身を引きます」(退職約束文書)と書いた。
その後、C氏の成績が上がらないことから、平成24年2月28日、C氏の直属の上司であるH氏(以下「H氏」という。)を通じて、退職約束文書に基づいて被告を辞めるように原告からC氏に連絡があった。これに対し、C氏としては被告を辞めたくなかったので、当初2800万円と書いたが、頑張って3月までに2500万やるということをH氏を通じて、A常務と原告に伝えた。
しかし、平成24年3月9日、H氏はC氏に対し、4月の人事のことがあるから本当に辞めるかはっきりしろという原告からの話を伝えた。これに対してC氏は「辞めるつもりはない。」とH氏に伝えた。」
【懲戒事由該当性】
「被告の主張する個別の言動の懲戒事由該当性については、本件言動一覧表のとおりであるところ、前記2の判示のとおり、本件言動一覧表のうち、被告が撤回したNO1、NO2、NO29と、当裁判所がパワハラに該当しないとしたNO9、NO25、NO26を除くその余の言動については、被告主張のとおりの就業規則が適用される懲戒事由にいずれも該当するものと認められる。」
【処分の相当性】
「前記2で認定した各事実に基づいて検討するに、原告の一連の言動は、一般仲介事業グループ担当役員補佐の地位に基づいて、部下である数多くの管理職、従業員に対して、長期間にわたり継続的に行ったパワハラである。原告は、成果の挙がらない従業員らに対して、適切な教育的指導を施すのではなく、単にその結果をもって従業員らの能力等を否定し、それどころか、退職を強要しこれを執拗に迫ったものであって、極めて悪質である。
原告の各言動によって原告の部下らは多大なる精神的被害・苦痛を被った。すなわち、B氏はカウンセリングを継続的に受けざるを得ない状況に陥った。C氏は退職約束文書を無理やり作成させられた上に、約束した成果を達成できなかったC氏は、退職約束文書を根拠に原告から執拗に退職を迫られた。また、原告は、D氏に対しても暗に退職を迫り、E氏には他の従業員のいる前でさらし者にして退職を示唆する発言をした。F氏及びG氏に対しては「どこにも行き場所の無い人の為に作った部署で、売上をやらなければ会社を辞めさせることがミッション」などという通常想定し難い理不尽な要求・指示を行った。のみならず、部会での原告の発言からは、浦和流通営業部、横浜流通営業部及び大手町営業室における従業員のやる気、活力などを含む被告の職場全体の環境、規律に悪影響を及ぼしたことも推認できる。
(中略)
被告は、パワハラについての指導啓発を継続して行い、ハラスメントのない職場作りが被告の経営上の指針であることも明確にしていたところ、原告は幹部としての地位、職責を忘れ、かえって、相反する言動を取り続けたものであるから、降格処分を受けることはいわば当然のことであり、本件処分は相当である。」
当該判決の事例では、パワハラ被害を訴える者が複数名おり、裁判所が申告された事実の全てを認定したわけではないものの、多数のパワハラ行為が認定されている特殊性があります。
