パワハラによる労働問題といえば、パワハラの慰謝料(損害賠償)請求、労災申請等など、様々な問題があります。いずれにしても、対応にあたっては、パワハラの事実を特定することが重要です。
実務上、①パワハラといえるのか、②パワハラといえるとして証明できるのか、③どの程度の心理的な負荷があったのか等を検討することになります。
①パワハラといえるのかについては、パワハラといえなければ慰謝料等を請求できない可能性があります。そして、例えば暴言等があったとしても、経緯や状況など次第では、パワハラと評価されない可能性も、ゼロではありません。同じ表現が用いられていても、経緯や状況等によって、評価が異なる可能性もあります。ですので、パワハラの言動の表現などはもちろん、経緯や状況なども、具体的に特定する必要があります。
③どの程度の心理的な負荷があったのかについては、人格否定や人間性を否定するようなパワハラがあったとしても、それだけでは、労災と評価されない可能性があります。というのも、労災の認定基準では、「上司等による「中」に至らない程度の身体的攻撃、精神的攻撃等が行われた」ことが心理的負荷の強度が「弱」の具体例として挙げられ、また、「人格や人間性を否定するような、業務上明らかに必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃が行われて反復・継続していない」こと等が「中」の具体例として挙げられています。「弱」や「中」の強度の心理的負荷があっても、それだけでは、原則として労災にはなりません。ですので、パワハラであったといえるとして、どの程度の心理的負荷と評価されるのかも、具体的な事実に基づいて検討する必要があります。
そして、労働審判、裁判や労災申請等の法的な手続きについては、上記①や③等を検討した上で、具体的な事実を主張する必要があります。会社側から債務不存在確認請求がされた珍しい事案ではありますが、横浜地裁相模原支部令和4年2月10日判決(労働判例1268号68頁)では、「パワハラ等が不法行為に該当するか否かは,行われた日時場所,行為態様や行為者の職業上の地位,年齢,行為者と被害を訴えている者が担当する各職務の内容や性質,両者のそれまでの関係性等を請求原因事実として主張して当該行為を特定し,行為の存否やその違法性の有無等を検討することにより判断されることとなる。」と判示されています。例えば「令和8年に叱責された。」等というような抽象的な主張では、適切に評価されない可能性があります(会社や労基署からも、具体的に特定するよう求められることもあります。)。
このように、パワハラ労災や損害賠償請求では、「叱責された。」、「怒られる。」等といった検討にとどまらず、(パワハラの問題に限ったことではないですが、)具体的に検討、主張していくことが極めて重要です。
