東京地裁令和6年4月17日判決は、高層マンションの外壁面の窓ガラス清掃に従事中に転落して頚髄損傷の傷害を負った原告が、会社に対して損害賠償を求めたのに対して、会社に安全配慮義務違反がなかったとして、損害賠償請求が認められなかった事案です。
原告からは複数の注意義務違反が主張されたところ、その一つに、安全措置を講じる義務違反がありました。
安全措置を講じる義務違反の有無の判断にあたって、通路の危険性の高低が、主たる理由になっています。
事故が起きたマンションの作業で通る通路には、屋根ルートという転落に至るおそれが相当に大きいルートと、脇道ルートという転落の危険性が極めて低いルートがあったようです。
そして、原告は、「初めて本件清掃作業を担当した際、先導した先輩の従業員が本件屋根ルートを通行したので、自身もそれに倣った。そのときに本件清掃作業を担当した上記先輩の従業員を含む四、五名の従業員も全員が本件屋根ルートを通行していた。」、「本件清掃作業を担当した被告の従業員は、皆が本件屋根ルートを通行しており、本件脇道ルートを通行する者はいなかった。」と述べていました。
しかし、裁判所は、被告の従業員が、清掃作業において、通常、転落の危険性が低い脇道ルートを通行していたと考えられる旨判断しました。
その結果、規則519条所定の「墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所」に当たらず、規則540条所定の「安全な通路」と評価し得ることから、原告が主張する規則519条、540条違反の主張が採用できないと判断されました。
労災の損害賠償請求では、主張する事故態様、現場や機械等の危険性、それらを裏付ける証拠が重要になります。
