東京地裁令和7年10月2日判決(労働判例ジャーナル169号58頁)は、遺族補償給付の給付基礎日額を誤ったとして、遺族補償給付支給処分の取消請求が認められた事例です。
うつ病等の精神疾患の発病や過労自死が労災として認定されると、休業補償給付や遺族補償給付等の労災補償を受給できます。休業補償給付や遺族補償給付等については、給付基礎日額を基に補償額が算定されています。
例えば、遺族補償年金のうち、遺族補償年金の金額は、ご遺族が2人の場合、給付基礎日額の201日分とされています。
給付基礎日額は、原則として、労働基準法の平均賃金に相当する額とされています。平均賃金は、原則として、業務等による負傷等の原因となった事故が発生した日又は医師の診断によって疾病の発生が確定した日の直前3か月間に労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割った1日当たりの賃金額です。残業代等の割増賃金も、賃金の総額に含まれます1。
労災の遺族補償給付等については、詳細には、厚生労働省のホームページに掲載されているパンフレットが分かりやすいですので、ご覧ください。
給付基礎日額が給付金額の基になることから、給付基礎日額が本来認められるべき金額より低くなってしまうと、その分、労災補償の金額も小さくなってしまいます。
東京地裁令和7年10月2日判決(労働判例ジャーナル169号58頁)の事例は、本来認められるべき給付基礎日額が1万6025円であるから、労基署が給付基礎日額を1万1676円とした処分が違法とされ、労基署の処分が取り消されるべきであるとして、ご遺族の請求が認められた事例です。
その差額は、4349円です。例えば遺族補償年金の金額が給付基礎日額の153日分だとすると、4349円×153日で、66万5397円になります。労災認定されること自体が被災者やご遺族にとって大きな経済的な支えになることがありますが、給付基礎日額が上がることでより一層、補償が手厚くなります。
東京地裁令和7年10月2日判決(労働判例ジャーナル169号58頁)の事例では、労働条件の不利益変更や、被災者の労働時間の認定等が争点となった事例です。取消訴訟に至っていることから、審査請求等の行政段階では労基署の判断が維持された事例です。うつ病等の精神疾患や過労自死等の労災では、労災認定後も給付基礎日額の誤り等の法的な問題が存在し、それ対して適切に対処する必要が存在することがあります。ときには、労災認定後も、労基署の処分について、訴訟にまで至ることもあります。
