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奈良県(うつ病自殺)事件・うつ病自殺と安全配慮義務違反の成否に関する事例

2026 1/27
労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等) 裁判例
2026年1月27日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

はじめに

 奈良県(うつ病自殺)事件・令和4年5月31日奈良地方裁判所判決労働判例1330号53頁は、自死した故人の遺族らが県に対して損害賠償請求をした事例で、自死した故人のうつ病の発病、増悪について、うつ病の発病については安全配慮義務違反を否定し、増悪・自死については安全配慮義務違反を肯定した事例です。

 うつ病の発病、増悪に係る安全配慮義務違反について、業務の過重性や、故人の体調等に関する使用者(上司)の認識等を踏まえて、判断されています。

うつ病発病についての安全配慮義務違反等の否定

 「平成26年10月から平成27年2月にかけての亡一郎の時間外勤務の時間をみると、1か月当たり60時間を超える月もあったものの、30時間程度の月も見られ、亡一郎がうつ病に罹患する前の6か月間において、過重な長時間業務がうつ病の発症を予見できる程度に常態化していたとまではいえない。そして、被告は、平成27年3月から同年4月にかけて、亡一郎の業務量が過酷なほどに増加したことは認識していたものと認められるが、亡一郎は精神科医院に通院を要するほどの心身の不調を明確に上司らに訴えたとは認められず、亡一郎の業務の進捗状況にも問題がなかったこと等からすると、この頃に、上司らが亡一郎の勤務態度等から精神疾患の発症を疑ってしかるべき状況にあったとは認められない。

 そうすると、亡一郎がうつ病に罹患したことについて、被告に国家賠償法1条1項の適用上違法と評価され、又は民法415条に当たると認められる安全配慮義務違反があったとはいえない。」

自殺についての安全配慮義務違反の肯定

 「もっとも、被告は、(中略)亡一郎がA1課における業務を負担に感じ、心身の健康が危ぶまれる状態にあることを窺わせる情報を得ていたにもかかわらず、B1課において亡一郎を恒常的な時間外勤務に従事させる中で、亡一郎の当時の上司は、平成28年12月13日付の産業医面談指導等結果報告書を受領し、亡一郎が長時間に及ぶ過重労働の継続により疲労が蓄積し、抑うつ状態で治療中であるため、今後の措置として、これ以上長時間の時間外勤務が生じないように職場における対策と配慮が必要であるとの意見の提示を受けたことが認められる(甲11)。

 そうすると、被告は、遅くともこの時点において、A1課からの異動によっては、亡一郎の業務負担に起因して生じた心身の健康が危ぶまれる状態が解消されておらず、むしろ長時間の過重労働による疲労の蓄積の結果、精神疾患を発症して治療中であり、医学的見地から長時間の時間外勤務を避けなければならないことを認識したといえる。そうであるのに、被告(亡一郎の所属長であるB1課課長)は、早期の帰宅の呼びかけ等で業務量の軽減を亡一郎の自由意思に委ねるのみならず、亡一郎を長時間の時間外勤務に従事させないための具体的な措置(担当事務の変更や分担事務量の軽減等)を講じるべき義務(安全配慮義務)が生じたといえる。それにもかかわらず、被告(B1課課長)は、亡一郎の時間外勤務を軽減するための実効的な措置を講じておらず、その結果、亡一郎は、産業医の面接指導後約6か月にわたり長時間の時間外勤務に従事し、自殺するに至ったのであるから、被告(B1課課長)は当該注意義務に違反したと認めるのが相当である。」

さいごに

 上記の裁判例の事例では、公務災害の認定がされています。公務災害が認定されていても(理由次第ではありますが)、使用者の安全配慮義務違反が否定されることもあります。

 安全配慮義務違反を追及するためには、公務災害申請とはまた異なる観点からの主張立証も必要です。

 うつ病や過労自死の公務災害に関する損害賠償請求は、弁護士にご相談ください。

 当事務所もご相談をお受けしています。

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