はじめに
平成30年12月11日横浜地方裁判所判決は、A社の亡従業員が倉庫での作業中に、B社(A社の完全子会社)の従業員が運転するB社所有の大型貨物自動車と荷下ろし作業用スロープの間に挟まれて死亡した事故について、A社、B社、B社の従業員の責任を認めました。
事故の内容
「被告Y3(注:B社の従業員)は,平成27年10月22日,被告Y2(注:B社)の事業の執行として,同社の所有する事業用大型貨物自動車(中略)を運転して,合板を積載した海上とコンテナを△△第二センター倉庫下屋のトレーラーヤードに搬入し,亡Aが被告Y1の倉庫作業員としてコンテナの封印を切った。亡A及び被告Y3がコンテナの扉を開けてコンテナ本体に固定した後,同日午前10時33分頃,被告Y3は,コンテナの荷下ろし口を下屋側スロープに接続させるため本件自動車を後退させるに当たり,車両の後方の安全を確認する義務を怠り,本件自動車の後方にいた亡Aを本件自動車のトレーラー部分後部(甲8の7・11枚目以下)と下屋側スロープのフラップ板との間に挟み,よって,亡Aは,(中略)死亡した(本件事故)。」
B社の従業員の注意義務違反について
「本件自動車は全長が非常に長く,被告Y3が本件自動車を停車させた位置では,本件自動車の真後ろと下屋側スロープとの間が運転席から完全な死角となり,下屋側スロープの脇に立っている者がいてもほとんど認識することができない状態にあった上,本件自動車にはバックモニターがなく,後退時に警告音の鳴る装置もなかった。しかるところ,前記1(3)エのとおり,被告Y3は,亡Aとともにコンテナの扉を開ける作業を行った後,亡Aが本件自動車の左後部角付近の脇にいるのを確認した上で本件自動車の運転席に乗り込み,後退の態勢をとって目視及びサイドミラーで左右後方を確認したものの,亡Aの姿が見当たらなかったのであるから,亡Aが,被告Y3からの死角となる本件自動車の真後ろと下屋側スロープとの間にいる可能性を十分認識し得る状況にあったものといえる。
上記の事情に加え,本件事故の当時における被告Y2の運送安全管理規定上,海上コンテナを輸送する運転手は後退時に必ず降車して後方の安全を確認するよう求められていたこと(甲6の3・31頁から33頁まで)も勘案すれば,被告Y3としては,倉庫作業員からの合図もなく本件自動車を後退させるのであれば,一旦本件自動車から降りて目視で確認するなどの方法により,死角となる本件自動車の真後ろと下屋側スロープとの間も含めて後方の安全を慎重に確認すべき注意義務を負っていたものといえる。それにもかかわらず,被告Y3は,上記注意義務を怠り,右後方及び左後方を目視又はミラーで確認したのみで亡Aが既に下屋側スロープの周辺から離れたものと軽信して本件自動車を後退させた過失により,亡Aを本件自動車と下屋側スロープとの間に挟み死亡させたものである。以上のとおり,被告Y3の注意義務違反は,後退に当たっての後方確認という運転者としての基本的注意義務を怠ったものであり,加えて,被告Y3が1年程度のトレーラーの運転経験を有する職業運転手であること(前記1(3)イ)も考慮すれば,その注意義務違反の程度は重いといわざるを得ない(中略)。」
A社の安全配慮義務違反について
「本件事故の際,亡Aが従事していた固定式スロープを使用した荷下ろし作業が,後方に倉庫作業員が残っているうちにトレーラーが後退を開始することに伴う衝突事故の危険を内包するものであることからすれば,被告Y1としては,上記作業に従事する倉庫作業員に対する安全配慮義務として,コンテナの扉を開放した後,倉庫作業員が確実にトレーラーの後方から離れ,再び立ち入らないようにするために有効と認められる措置を講ずる義務を負っていたものと認められる。それにもかかわらず,前記1(1)及び(2)のとおり,被告Y1の倉庫部倉庫一課第二倉庫係長であり,△△第二センターの責任者であるGは,亡Aに対し,コンテナの扉を開けたらすぐにトレーラーの後方から離れ,トレーラーの後部と下屋側スロープとの間に立ち入ってはならないことを作業中に口頭で伝えたことがあったにすぎず,亡Aの派遣から数日間が経過した後は,亡Aの作業を直接監督し又は作業の方法について具体的な指示を与えることもなかった。また,G及びその上司らは,コンテナの扉を開けた後は直ちにその場を離れて安全を確保する旨を明確な作業手順又は注意事項として定める措置を講じておらず,トレーラーの予期せぬ後退による事故を防ぐために常に複数の倉庫作業員で荷下ろし作業に従事するようにとの指示を徹底することもなかったのであり,更には,亡Aに対する一般的な安全衛生教育すら実施していなかったものである。被告Y1が講じた措置は,とりわけ亡Aのように若年で固定式スロープを使用した荷下ろし作業の経験も乏しい者が,本来の作業工程上は上がっているはずのフラップ板が倒れていることに途中で気付くといった想定外の事態に直面したときに,確実に危険を回避しつつ事態に対処する上では,極めて不十分なものであったといわざるを得ない。
そうすると,被告Y1が,コンテナの扉を開放した後,倉庫作業員が確実にトレーラーの後方から離れ,再び立ち入らないようにするために有効と認められる措置を講ずべき安全配慮義務を怠り,そのことが本件事故発生の要因となったことは明らかであり,その義務違反の程度は重いというべきである。」
さいごに
過失相殺もなされましたが、亡くなった方の過失に比べてA社らの義務違反の程度が重大であることから、過失相殺の割合は1割とされています。そして、死亡慰謝料や逸失利益などの損害は、結論としては、約7100万円の限度で認められています。
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