はじめに
仕事が原因で双極性障害(躁うつ病)と診断された場合や、自死(自殺)された場合、被災者やそのご遺族は、労災申請と会社に対する損害賠償請求等をできる可能性があります。
双極性障害(躁うつ病)とは?
双極性障害(躁うつ病)は、ICD‐10精神および行動の障害臨床記述と診断ガイドラインによれば、「患者の気分と活動水準が著しく乱されるエピソードを繰り返すこと(少なくとも2回)が特徴であり、気分の高揚、エネルギーと活動性の増大を示す場合(躁病または軽躁病)と、気分の低下、エネルギーと活動性の減少を示す場合(うつ病)があ」ります1。
躁状態では、非常に高揚した爽快な気分になり、夜も寝ず、声が嗄れるまでしゃべり続け、一晩中、一日中動き続けることもあります。色々な良いアイディアも浮かび、仕事が捗るようにも見えます。浪費をしたり、性的に奔放になることもあります2。軽躁状態では、本人も周りの人もそれほどには困らない程度の状態です。気分が高揚し、仕事が捗り、調子が良いというような状態です。そのため、軽躁状態の時には病院を受診されない方もいます3。
双極性障害(躁うつ病)の労災申請
うつ病等の精神障害の労災の認定基準では、対象となる病気が決まっています。双極性障害(躁うつ病)は、精神障害の労災の対象になります。
精神障害の労災の認定基準では、原則として、対象になる病気になっていることの他に、病気になる前のおおむね6か月の間に仕事による強い心理的負荷(ストレス)があると認められること等の条件を満たす必要があります。
双極性障害(躁うつ病)の場合、軽躁状態では病院を受診せず、抑うつ状態になってから病院を受診する方がいます。労災の認定基準では、原則として、病気になる前のおおむね6か月間の仕事での強い心理的負荷(ストレス)が評価対象になります。抑うつ状態になった時の前のおおむね6か月間の出来事が評価対象になるのか、それ以前から双極性障害(躁うつ病)を発病している可能性があるのか、調査・検討する必要があります。発病時期の構成を誤ると、労災の見通しも誤ります。特に通院歴がない方が自死され、抑うつ気分が認められる前に躁状態を窺わせるエピソードがある場合には、慎重に対応を検討する必要があります。
発病時期に慎重な検討を要する等、双極性障害(躁うつ病)の症状の特徴を踏まえて検討する必要がありますが、労災の認定基準の条件を満たせば、双極性障害(躁うつ病)の発病や自死について、労災認定を受けることができます。
労災認定を受ければ休業補償や治療費の補償を受給できます。大切な家族が自死された場合には、ご遺族は、遺族補償給付等を受給できます。
会社への損害賠償請求
職場が原因で双極性障害(躁うつ病)になったり、その影響として自死された場合、被災者やそのご遺族は、会社に対して損害賠償請求できる可能性があります。
会社への損害賠償請求では、休業損害や逸失利益(将来の収入の減少分)、慰謝料(入通院慰謝料、後遺症慰謝料、死亡慰謝料)等を請求できます。
会社への損害賠償請求でも、発病時期等が争点になることもあります。
さいごに
双極性障害(躁うつ病)の労災申請や会社への損害賠償請求は、弁護士にご相談ください。
当事務所もご相談をお受けしています。
