労働時間とは?
過労うつ・過労自死等の労災や、残業代請求等の労働問題において、労働時間がどの程度あったのかが問題になることがあります。
例えば、サービス残業をしていて、会社が残業代を支払ってくれない。サービス残業をしている労働者が会社に対して未払の残業代を請求する場合、労働者が、残業時間がどの程度あるのかを主張・証明する必要があります。
また、長時間労働によってうつ病等の精神疾患にり患して(過労うつ)、自死してしまった場合(過労自死)にも、労働者やそのご遺族が、長時間労働があったことや、どの程度あったのかを、主張・証明する必要があります。
それでは、労働問題における労働時間とは、どういう意味でしょうか。
残業代請求における労働時間と過労うつ・過労自死といった労災における労働時間とでは考え方が異なってくる可能性があるのですが、前者の考えでいうと、判例上、労働時間は、労働者が使用者(会社)の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
指揮命令下に置かれている時間については、就業時間内に通常の働き方をされている時間は労働時間であるといえますが、例えば始業時刻前の準備の時間が労働時間に当たるのか、仮眠時間中が労働時間に当たるのか等、どの時間が労働時間に当たるのか自体、労働問題になることがあります。
労働時間を証明する方法
労働時間を証明する方法としては、タイムカード、業務日報等、電子メール等、入退館記録、IC乗車券等々、様々な証拠による方法があります。
そして、それぞれの証拠によって、労働時間がどのようにして認定されるのかを検討する必要があります。
ですが、証拠が全くなければ、実際には恒常的にサービス残業や長時間労働をしていても、残業していたことが認定されない可能性があります。残業していたことが認定されなければ、残業代の請求は、認められません。過労うつや過労自死等の労災も、認定されない可能性があります。
ですので、残業代請求や精神疾患の労災請求等、労働時間が問題となる労働問題では、労働時間の証拠を集めることが重要です1。
パソコンのログ記録による証明
パソコンのログ記録(ログインやログアウトした時間の記録)も、労働時間を証明する証拠になり得ます。
例えば、平成18年11月10日東京地裁判決労働判例931号65頁は、次のように述べて、証拠としての価値を認めています。
「原告が被告に在職した4月から9月までの各月ごとに何時間の時間外労働をしたのかについて見るに、上記のように被告においては、職員の勤務管理を厳格に行っていなかったせいもありタイムカードなり労働時間の日々あるいは月次の申告などの労働時間管理の資料が存在しない。
原告は、7月以降は被告が時間管理をしないことに疑問を抱くなどして自己の手帳に日々の勤務時間を記したものに基づいて時間外労働時間数を算出し、4月から6月分は手帳に基づく7月と9月の時間外労働数の平均時間で残業時間数を推定する形で当該期間中の残業時間を算出しているが、後記の原告が被告在職時に操作していたパソコンのログデータに照らすと、原告の手帳に記載した始業終業時間が必ずしも正確性を担保されたものとはいえず(中略)、原告の手帳にある数字はあくまで原告の主観的な認識によるものでこれを裏付ける客観的な証拠がない以上、全面的にこれによることはできず,当事者間の公平にも反するものというべきである(中略)。これに対して、乙第15号証の1は、原告のパソコンのログデータであり、これによる各月の日々のデータを観察するに、土日祝日を除いては所定始業時間の前後にパソコンが立ち上げられており、これは原告が出勤してきたであろう時間にほぼ対応して立ち上げられていると思われ、デスクワークをする人間が、通常、パソコンの立ち上げと立ち下げをするのは出勤と退勤の直後と直前であることを経験的に推認できるので、他に客観的な時間管理資料がない以上、当該記録を参照するのが相当というべきである。同様に休日出勤した日にも出勤してきてまもなく当該パソコンを立ち上げ、帰宅間際に立ち下げをしているものと思われる。少なくとも、上記パソコンのログデータに記録のある時間は原告が被告において各当日に被告の事務所にいて仕事をしていたことを推認できる(中略)。」
「そこで、原告が被告の事務所に確実に居たことを示す資料として、被告が提出した原告が在職中に使用していたパソコンのログデータを利用しつつ足りないところを原告の手帳における資料で補完し、さらに資料のないところは実績のある数字から推認するしかないものと思われる。被告においても、深夜残業時間の計上に限るものではあるが、当該ログデータを基礎にしていることからすると、深夜以外の残業時間の算出に当たってもこれを参照して時間計上することにある程度の合理性・納得性を覚悟しているものと思われる。」
「これに対して、原告は、パソコンのログデータは事後に改竄可能であることから客観的証拠として不十分である旨指摘するが、ログデータの各時間を参照して見る限りそのような意図的な改竄のなされた形跡が窺われない。また、原告は、パソコン立ち上げ前に事務所内の掃除をしたり、パソコンを立ち下げた後に事務所に残っていることもあったと主張するが、毎日がそのような状態であったとは思われず、原告において各日にちにおいてパソコンのログデータと異なる時間帯に仕事をしていたとする特段の事情(例えば、事務所以外で仕事をしていたことなど)が主張されるなり、客観的な資料でもって立証されない限りは当該データの時間の推定力を破って積極的に原告の主張する各日にちの時間を基礎付けることはできないものといわなければならない。」
デスクワーク等をしており、パソコンのログ記録がある場合、ログ記録を確保することも重要です。
労働時間が問題となる労働問題は弁護士にご相談を
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