契約期間5年、更新4回での雇止めが適法とされた事例

1 雇止めの制限法理

 会社が有期労働契約の期間満了に際して契約の更新を拒絶することは、雇止めと呼ばれています。例えば契約期間が1年間だとして、1年間の期間満了に際して、契約の更新を拒絶することです。

 雇止めについて、労働契約法は、以下の二つのいずれかの場合に、契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合等であって、会社が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、会社は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすと定めています(労働契約法19条柱書)。

 ① 実質無期型:当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

 ② 期待保護型:当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 以下の裁判例は、期待保護型について、契約更新を期待することについての合理的な理由があるとは認められなかった事例です。

2 東京地裁令和3年6月16日判決 ドコモ・サポート事件

⑴ 当事者

 被告は、株式会社NTTドコモのグループ会社です。

 原告は、障害者雇用枠で被告に採用された者です。被告の研修センターや監査部における業務に従事していました。

⑵ 事案の概要

 原告は、被告との間で平成25年9月4日に有期労働契約を締結しました。

 原告は、その後同契約を4回更新された後、4回目の更新期間満了時である平成30年3月31日に被告から雇止めされました。

 原告は、被告に対して、労働契約法19条2号の有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があり、かつ、当該雇止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないから、雇止めが違法である旨主張していました。

⑶ 裁判所の判断

 「労働契約法19条2号における有期労働契約が更新されるものと期待することについての合理的理由の存否は、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、他の有期労働契約の更新状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無等を総合考慮して決すべきものと解される。」

 (中略)

 「被告においては、有期契約労働者である契約社員等の契約期間は、平成20年12月1日以降、原則4月1日から翌年3月31日までの1年間であり、契約の更新回数の上限は4回、1年ごとの雇用契約で、契約期間は最長で5年間として運用されており、契約社員等の就業規則においても、契約社員等の契約の更新回数の上限は4回であり、契約期間は最長で5年間である旨明記されていることが認められる。被告においては、雇用制度の改定が行われ、平成26年4月1日以降は、新雇用制度が導入されているが、同制度においても、有期契約労働者である有期社員の契約の更新回数の上限は4回であり、契約期間は最長で5年間とされ、有期社員の就業規則にも同旨の規定が置かれた上、旧雇用制度の有期契約労働者である契約社員等から有期社員に雇用替えした場合には、旧雇用制度の各雇用区分における従前の雇用期間を含め、通算して、契約の更新回数は最大で4回、契約期間は最長で5年間とされ、これまで運用されていることが認められる。また、被告においては、旧雇用制度下では、契約社員は、4年目又は5年目に、正社員又はスタッフ社員の採用募集に応募することが可能であり、その選考試験に合格すれば正社員又はスタッフ社員として採用され、新雇用制度下でも、有期社員は、4年目又は5年目に、エリア基幹職社員の採用募集に応募することが可能であり、選考試験に合格すれば同社員として採用されるところ、被告における有期契約労働者から無期契約労働者への採用率(合格率)は、年度によって異なるものの、旧雇用制度下では、おおむね15パーセント程度、新雇用制度下では、おおむね40パーセント弱から50パーセント程度であると認められる。一方で、上記各採用募集の選考試験に合格することなく更新限度回数に達した又は契約期間が5年に達した有期契約労働者は、期間満了により被告に雇止めされており、その数は年度によって異なるが、相当数に上ることが認められる。」

 「このような被告における有期契約労働者に関する雇用制度及びその運用状況に照らせば、被告では、有期契約労働者については、無期契約労働者へのキャリアアップ・・・の仕組みを設ける一方で、無期契約労働者の登用試験・・・に合格しない者については、長期雇用の適性を欠くものと判断し、更新限度回数又は契約期間の上限により契約を終了するという人事管理をしているものといえる。そうすると、被告の雇用制度においては、有期契約労働者は、無期契約労働者の登用試験に合格しない限りは、有期契約労働者として5年(更新限度回数4回)を超える長期間の雇用を継続していくことは予定されていないものといえる。」

 (中略)

 「原告は、本件契約を締結する前に行われた入社説明会において、被告から、契約社員の制度について記載された資料を交付された上で、同資料の記載に基づき、本件契約の契約更新回数の上限は最大で4回であること、契約期間は最長で5年間であることを説明されている上、本件契約1の雇用契約書を示されながら具体的な労働条件について説明されているところ、同契約書に雇用更新限度回数が0回と記載されているのは、今後被告の契約社員に関する制度が変更されるため、現在の契約社員という制度での雇用更新はないという理由からであり、本件契約1の契約期間満了後に、新たな雇用制度の下で契約が更新される場合には、次回の契約では、契約の更新限度回数は3回と表記されるとの説明を受けていること、原告は、雇用更新限度回数は0回と記載のある本件契約1の雇用契約書に署名捺印して、被告との間で有期労働契約を締結し、その後、更新のたびに、契約書の「更新契約更新限度回数」欄の数字を減らされた各契約書に署名捺印し、最終的には、「雇用契約更新限度回数」欄に今回の契約を除き0回、契約の更新はしない旨記載された有期社員雇用契約書に基づいて契約更新を行っていることが認められる。」

 「以上の原告と被告との間の本件契約の締結に至るまでの経過や被告の契約期間管理に関する状況等からすれば、原告は、被告に採用された当初から、本件契約の更新限度回数は最大で4回であることを認識した上で本件契約を締結しており、その認識のとおり、本件契約が更新されていったものといえるから、原告において、本件契約が、更新限度回数4回を超えて、更に更新されるものと期待するような状況にあったとはいえない。

 そして、被告における雇用制度等の運用状況や、原告がエリア基幹職社員の採用募集に応募して選考試験に合格できなかったこと等から、平成30年3月31日の本件契約の満了時点で、本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認めることはできない、と判断されました。

 厳格に更新手続がなされていると、労働者に不利に作用します1。本件も、そのような事例であったと考えられます。

 雇止めの労働問題は、弁護士にご相談ください。当事務所もご相談をお受けしています。

    1. 城塚健之他編.最新テーマ別[実践]労働法実務2 雇止め・無期転換の法律実務.株式会社旬報社,2024.8,p.84 ↩︎