陸上自衛隊において、幹部自衛官が、部下に対して、廊下中に響き渡る大声で指導し、部下2人が精神疾患発症

1 はじめに

 北海道放送の報道によりますと、陸上自衛隊において、幹部自衛官が、複数の部下に対して、廊下中に響き渡る大声で指導し、部下2人が精神疾患発症したとのことです。

 北海道放送:陸上自衛隊において、幹部自衛官が部下に対して、廊下中に響き渡る大声で指導し、部下2人が精神疾患発症

2 報道の内容

 以下は報道からの抜粋です。

 「陸上自衛隊北部方面総監部に所属する50代の幹部自衛官が、複数の部下に対し、大声を上げるなど威圧的な言動で指導して、2人が精神疾患を発症したとして、停職1年の懲戒処分となりました。」

 (中略)

 「陸上自衛隊によりますと、1等陸佐は、2022年8月ごろから2023年3月ごろまでの間、複数の部下に対し、大声を上げるなど威圧的な言動で指導し、精神的苦痛を与え、このうち2人が精神疾患を発症するなど、職場環境を悪化させました。」

 「暴言や人格否定のような発言はありませんでしたが、執務室内で部下の業務要領などについて、廊下中に響き渡る大声で指導をしていたということです。」

 「部下隊員からの部隊への報告で事案が発覚し、陸上自衛隊が本人および周辺からの聴き取り調査を行いました。」

 「調査の結果、パワハラ行為が明らかになり、自衛隊法第46条1の「職務上の義務に違反し又は職務を怠った場合」にあたるとして、陸上自衛隊は、14日付で、1等陸佐を停職1年の懲戒処分としました。」

3 さいごに

 報道による限り、2名の部下が精神疾患を発症しているようです。

 「暴言や人格否定のような発言はありませんでしたが」と報道されており、実態が分かりませんが、自衛隊内ではそのように結論付けたのかもしれません。しかし、適切な調査や、評価がなされているのでしょうか。

 また、「調査の結果・・・懲戒処分としました。」と報道されていますが、公務災害が認定されたとは報道されていないようです。隊内ではどのような判断をされているのでしょうか(公務災害は、民間の会社員でいうところの労働災害(労災)です。)。

 陸上自衛隊の自衛官がパワハラによってうつ病や適応障害等の精神疾患を発病した場合、公務災害の補償を受けられる可能性があります(「陸上自衛隊員のパワハラ自死、過労うつ、事故等の公務災害について」をご覧ください。)。また、国(自衛隊)に対して国家賠償請求をすることで、公務災害では補填されない損害の賠償を求めることもできます。

 また、辞めたくても辞められない、パワハラ上司がいる職場環境はキツいけれども辞めたくない等、自衛隊を辞めたいか、辞めたくないかは、自衛官一人ひとりのご判断になるかと思われます。ただ、退職したいのに退職できない場合は、弁護士に退職代行を相談されるのも考えられます(「陸上自衛隊等の自衛官の退職代行」もご覧ください。)。

 自衛隊内でのパワハラは、自衛官の重大な労働問題の一つです。

 パワハラがなくなるよう望むとともに、パワハラが起きた場合に、被害者である自衛官がパワハラから逃れることが出来たり、職場改善を求めたり、適切な補償を受けられるよう、望みます。