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うつ病や自死等の労災申請・損害賠償請求・安全配慮義務違反等、解雇・退職勧奨、残業代請求等の労働者側の労働問題を主に取り扱う栄田法律事務所(神奈川県横浜市)です。 | うつ病や自死の労災申請等の労働問題なら栄田法律事務所へ
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  3. 残業代請求における出来高払制賃金について労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当であるとされた例

残業代請求における出来高払制賃金について労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当であるとされた例

2024 12/19
労働問題 賃金に関する問題(未払賃金、賞与、残業代等) 裁判例
2024年12月19日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

1 残業代請求における「出来高払制その他の請負制」の賃金の取扱い

 残業代請求において、割増賃金は、以下のとおり計算されます(「残業代請求等における割増賃金について」参照)。

 すなわち、割増賃金は、「通常の労働時間又は労働日の賃金」を基礎として算定されます。

 「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは、その労働を通常の労働時間・労働日に行った場合に支払われる賃金を意味します。

 具体的な計算方法としては、以下のとおりです。

 「通常の労働時間又は労働日の賃金」÷所定労働時間数=1時間当たりの割増賃金の単価

 例えば、以下の場合は、1時間当たりの割増賃金の単価は、約1,705円です。

 「通常の労働時間又は労働日の賃金」=月給の30万円

 所定労働時間数=176時間

 月給の30万円÷176時間=約1,705円

 他方で、「出来高払制その他の請負制」の賃金(出来高払制等の実際の仕事の成果に応じて額が定められる賃金)については、算定期間における基礎賃金の総額を、当該算定期間における総労働時間で除して、算出されます。そして、実務上、時間外労働時間についても総労働時間の一部として通常の賃金分が支払われているとして、1時間当たりの単価は、通常賃金に割増率を乗じた0.25のみになると考えられています。

 算定期間における基礎賃金の総額÷算定期間における総労働時間×0.25=1時間当たりの割増賃金の単価

 例えば、以下の場合は、1時間当たりの割増賃金の単価は、約347円です。

 歩合給30万円

 総労働時間=216時間(所定労働時間176時間+時間外労働時間40時間)

 歩合給の30万円÷216時間×0.25=約347円

 以上のように、「通常の労働時間又は労働日の賃金」と「出来高払制その他の請負制」の賃金のどちらに該当するかによって、残業代を計算する際の1時間当たりの単価が大きく変わってきます。

2 サカイ引越センター事件(2023年8月9日東京地方裁判所立川支部判決労働判例1305号5頁)

⑴ 当事者

 被告は、株式会社サカイ引越センターです。

 原告は、被告の元従業員らです。

⑵ 本件の概要

 本件判決は、残業代請求における出来高払制賃金について労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当であるとして、具体的事案において、業績給等が出来高払制賃金に当たらない旨判断しました。

⑶ 裁判所の判断

 「労基法27条及び労基法施行規則19条1項6号の「出来高払制その他の請負制」とは、労働者の賃金が労働給付の成果に応じて一定比率で定められている仕組みを指すものと解するのが相当であり、出来高払制賃金とは、そのような仕組みの下で労働者に支払われるべき賃金のことをいうと解するのが相当である(略)。」

 「業績給A(売上給)は、売上額に応じて支給される賃金である(略)。しかし、売上額は、営業職が顧客との間で交渉し、営業責任者が決裁して決定されるものであり(略)、直ちに現業職自身の労働給付の成果とはいえない。現業職の労働給付の成果とは作業量や運転距離であるところ、売上額は営業職の交渉力如何により必ずしも作業量等と一致しないこと、作業量等は助手の経験値や顧客の対応による影響を受けること、午前便に負担の大きい案件の割当てを受けるとその終了が遅くなり、午後便の配車の有無及び内容等にも影響し得ること等(略)に照らすと、売上額は、現業職の労働給付の成果(作業量等)と必ずしも連動するものではない。」

 (中略)

 「現業職としては結局のところ、売上額の多寡にかかわらず、専ら配車係が全体のバランスを考慮しつつ、裁量によって指示する案件の割当てに従って決められた作業をするほかはなかったといえる。」

 「したがって、業績給A(売上給)は、現業職の労働給付の成果に応じた賃金と実質的に評価することはできず、出来高払制賃金に該当するとは認められない。」

 (中略)

 「以上によれば、原告らの基礎賃金は、原告ら主張のとおり、基本給に各業績給及び各手当を合算したものとなる」。

3 残業代請求における業績給や手当の法的性質の検討が必要不可欠であること

 残業代請求において、会社が労働者に対して業績給や手当等を支給している場合、その業績給や手当の法的性質が必要不可欠です。

 「通常の労働時間又は労働日の賃金」と「出来高払制その他の請負制」の賃金のどちらに該当するかによって、残業代を計算する際の1時間当たりの単価が大きく変わってきますので、本件判決等を参考にして、慎重に判断する必要があります。

 

労働問題 賃金に関する問題(未払賃金、賞与、残業代等) 裁判例
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