1 はじめに
結論としては、会社が賃金や残業代を支払わない場合、労働者が労働基準監督署に対して相談することで、労働基準監督署が、会社に対して、未払いの賃金や残業代を支払うよう指導することがあります。その結果、会社が、労働者に対して、未払いの賃金や残業代を支払うこともあります。
2 労働基準監督署とは?
労働基準監督署は、厚生労働省の出先機関で、労働基準法に基づいて管内の会社を監督指導したり、労災保険法に基づいて労災保険の支給の調査等を行ったりする機関です1。
3 賃金や残業代の未払いがある場合に労基署に申告できること
会社に労働基準法等に違反する事実がある場合、労働者は、その事実を労働基準監督署に申告することができます2。賃金3や残業代4の未払いは労働基準法に違反する事実ですので、会社が賃金や残業代を支払わない場合、労働者は、その事実を労働基準監督署に申告できます。
4 労基署が会社に対して指導する可能性があること
労働者から申告を受けた労働基準監督署は、会社に対して、支払勧告をしてくれる可能性があります。労働基準監督署が支払勧告をすると、会社が、労働者に対して、未払いの賃金や残業代を支払う可能性があります。
5 さいごに
未払いの賃金や残業代の金額が低い場合、会社に対する未払いの賃金や残業代の請求をしても、弁護士費用を考えると、経済的なメリットが小さいときがあります。そのようなときに、労働基準監督署に申告することも考えられます(もちろん、会社と直接交渉する負担がなくなる等、弁護士に依頼するメリットは経済的なメリット以外にもあります。)。
未払いの賃金や残業代の金額が高く、弁護士費用で費用倒れにならない場合も、弁護士費用を抑えるために、まずは労働基準監督署に相談するのも一つです(結果的には当初から弁護士に依頼した方が良い可能性もあります。)。
他方で、仮に労働基準監督署に相談した結果賃金や残業代が支払われたとしても、それが法的に適切な金額の賃金や残業代であるとは限らないことにも注意が必要です。
ご自身では難しい場合や、まずは労働基準監督署に相談したけれども会社が支払わなかった場合等も、弁護士へご相談ください。当事務所へのお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」からお願いいたします。
- 労基署ってどんなところ?定期監督って?? ↩︎
- 労働基準法104条1項 事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。
2項 使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。 ↩︎ - 労働基準法24条1項 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
2項 略 ↩︎ - 労働基準法37条1項 使用者が、第33条又は前条1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2項~3項 略
4項 使用者が、午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
5項 略 ↩︎