年俸制と残業代請求について

1 年俸制とは?

 年俸制とは、労働者の能力や成果の評価に基づいて個別に賃金額が決定される制度です1。月給制とは異なり、例えば1年間の給与の総額が決定され、その12分の1、あるいは16分の1を毎月支給されます2

 それでは、年俸制の給与を受け取っている労働者は、会社に対して、残業代を請求できるのでしょうか。

2 年俸制と残業代請求

 結論としては、年俸制の給与を受け取っている労働者も、残業をしている場合は、会社に対して、残業代を請求できます。

 というのも、年俸制を採用したからといって、会社は、労働時間管理の義務と割増賃金の規制3を免れるわけではないからです4

 年俸制においては年俸額に残業代等も含めることを意図している例も見られ5、会社が年俸制の給与の中に残業代が含まれていると主張する場合もあります。

 その場合も、契約書や就業規則等によって残業代として支払われている金額が明示されていないときや、残業代として支払われている金額が容易に計算できないときは、労働者は、残業代を請求できると反論できる可能性があります6

 年俸制の給与を受け取っている労働者で、会社に対して残業代を請求したいけれども、自分では難しい場合は、当事務所にご相談ください。お問い合わせは、「お問い合わせフォーム」からお願いいたします。

  1. 水町勇一郎.詳解労働法第3版.東京大学出版会,2023.9,p.648 ↩︎
  2. 森島大吾監修.図解労務管理の基本と実務がわかる辞典.三修社,2021.10,p.122 ↩︎
  3. 残業代請求等における割増賃金について参照 ↩︎
  4. 土田道夫.労働契約法第2版.有斐閣,2016.12,p.337 ↩︎
  5. 森・濱田松本法律事務所編.企業訴訟実務問題シリーズ労働訴訟‐解雇・残業代請求,中央経済社,2017.2,p.160 ↩︎
  6. 固定残業代と残業代請求参照、土田道夫.労働契約法第2版.有斐閣,2016.12,p.337 ↩︎