1 はじめに
労働者(会社員)が業務に起因してうつ病や適応障害等の精神障害を発病した場合や、精神障害の影響によって自死してしまった場合、労働者やそのご遺族は、労災請求をして、補償を受けることができます。
それでは、労災請求する場合、手続としてはどのような流れになるのでしょうか?
以下では、精神障害の労災の労災請求をする場合の手続の流れを述べます(なお、弁護士や事案によって、進め方は他にもあると思います。)。
2 証拠の収集・保全
精神障害の労災の認定基準によれば、労災として認めてもらうためには、原則として、次の3つの要件、すなわち、①うつ病や適応障害等の対象となる精神障害を発病していること(「精神障害の労災の対象となる精神障害について」参照)、②発病前おおむね6か月の間に、長時間労働やパワハラ等の業務による強い心理的負荷が認められること、③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により精神障害を発病したとは認められないことを満たす必要があります。
そこで、3つの要件(特に①と②の要件)を満たすか否か検討するために、まずは、証拠の収集・保全を行います。
例えば、長時間労働の有無、有る場合の程度を確認するためには、タイムカード、勤怠表やパソコンのログ等の証拠を収集・保全します。
他には、パワハラの有無、有る場合の程度を確認するためには、メール、LINEや目撃者の供述等の証拠を収集・保全します。
証拠の収集・保全に要する期間はケースバイケースですが、証拠の収集・保全は重要ですので、必要な限り、時間をかけます。
場合によっては、証拠保全という、裁判所の手続上での証拠の保全を検討・実施することもあります。証拠保全の申立てをしてから証拠保全が実施されるまで、大体、1か月から3か月程度の時間が必要になります。
なお、時効には気を付ける必要があります(「労災の請求権の時効」参照)。
3 労災請求
証拠を収集・保全したら、精神障害の労災の要件を満たすか否か、すなわち、労災請求が法的に認められそうか否かを検討します。
そして、労災請求が認められる可能性がある場合、収集・保全した証拠に基づいて意見書を作成し、担当の労働基準監督署長に対して、労災請求をします(「労災の請求権者と請求手続」参照。全国の労働基準監督署の所在も参照。)。
労災請求に対する決定が出るまでの平均的な期間は、大体、8か月~9か月ほどといわれています。自死された方のご遺族の労災請求等の場合は、1年以上になることもあります。
なお、補償の内容については、「労災認定を受けた場合の補償の内容」をご覧ください。
また、会社に対して損害賠償請求できる場合もあり、労災請求と会社に対する損害賠償請求の順序が法的に決まっているわけではなりませんが、労災請求を先に行うことが多いです(「労災申請と会社に対する損害賠償請求の進め方」参照)。
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