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うつ病や自死等の労災申請・損害賠償請求・安全配慮義務違反等、解雇・退職勧奨、残業代請求等の労働者側の労働問題を主に取り扱う栄田法律事務所(神奈川県横浜市)です。 | うつ病や自死の労災申請等の労働問題なら栄田法律事務所へ
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長時間労働後に賃金減額を伴う配置転換をされた労働者が罹患したうつ病の業務起因性(労災認定)についての事例(裁判例)

2024 10/13
労働問題 労働災害の問題(過労死・過労自殺・過労うつ等)
2024年10月13日
弁護士栄田国良(神奈川県弁護士会所属)

 長時間労働後に賃金減額を伴う配置転換をされた労働者が罹患したうつ病の業務起因性が認められた(労災認定された)事例である、2023年11月14日京都地方裁判所判決を紹介いたします。

1 事案の概要

 原告が、出版社に勤務していたところ、長時間労働、配置転換等といった業務上の事由により、2015年4月頃、うつ病を発症したとして、京都上労働基準監督署長に対して労働者災害補償保険法13条及び14条に基づき、労働者災害補償保険療養補償給付、労働者災害補償保険休業補償給付を請求しました。

 それに対して、京都上労働基準監督署長は、原告からの各請求に対していずれも不支給決定を行いました。

 不支給決定を受け、原告は、不支給決定が違法であるとして、その取消しを求めました。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり、原告が主張するうつ病発症6か月前の心理的負荷の強度について、長時間労働後の総務への異動(配置転換)の心理的負荷が「強」であるとして、原告の請求を認めました。

⑴ 「原告は写真の技術を評価されて本件事業所において編集業務に携わっていたところ、平成27年4月中旬頃、総務に配置転換され、かつ、その業務は、納品等のほかは掃除等の雑用仕事が中心の閑職であり、給与としても編集手当相当額である月額5万円の減額を伴うものであったから、このような配置転換は、「配置転換としては異例なものである」とまではいえないものの、「明らかな降格であって、職場内で孤立した状況になった」ものであり、少なくとも心理的負荷強度は「中」であるというべきである。」

⑵ 「原告は、配置転換(4月中旬)の前に、2月中旬から3月中旬にかけて月100時間程度(2月17日、同月18日及び同月19日を起算とする30日間は、いずれも100時間超の勤務が認められる。)となる時間外労働に従事していたことが認められ、当該負荷も考慮して、心理的負荷について検討する必要がある。」

⑶ 「認定基準別表1(総合評価における共通事項)に当てはめて検討すると、本件疾病は『具体的出来事の心理的負荷の強度が労働時間を加味せずに『中』程度と評価される場合であって、出来事の前に恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)が認められ、出来事後すぐに(出来事後おおむね10日以内に)発病に至っている場合』に当たるから、上記配置転換の総合評価は『強』に修正されるものである。」

3 裁判所の判断に対する指摘

 小西康之明治大学教授は、以下のとおり指摘されています[i]。

① 「第1に、本判決は、『明らかな降格であって、職場内で孤立した状況になった』ものであり、少なくとも心理的負荷強度は『中』であるとする。しかし認定甚準の『弱』と判断する具体例には、『配置転換後の業務が容易に対応できるものであり変化後の業務の負荷が軽微であった』ことがあげられており本件もこうした側面があるともいいうる事案であった。」

② 「第2に、本判決は配置転換に伴う賃金減額も考慮して業務起因性を判断しているが、賃金減額等も、『業務に内在又は通常随伴する危険』と評価されるか、である(第1の点とも関連する)。」

  「裁判例には、賃金の多寡については、それ自体を単体として業務に内在する危険として捉えるのが難しいとしても、契約締結に至る過程や、契約上の労務内容、実際の労務内容、同僚との相対的な関係等を総合的に考慮して他の要因に影響を与える要素として斟酌するのが適切か否かという観点から検討し、これが是認できる場合には、全体的な心理的負荷の判断要素として勘案しうると解するのが相当とするものがある(略)。『人事措置上の合理性』の業務上外認定における位置づけや考慮の枠組みとあわせて、さらに検討すべき課題と思われる。)」


[i] 「長時間労働後、賃金減額を伴う配置転換をされた労働者がり患したうつ病の業務起因性」ジュリスト1594号4頁以下

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