労働者の会社に対する残業代請求の手続の流れ

1 はじめに

 労働者(会社員)が会社に対して残業代を請求する場合、手続としてはどのような流れになるのでしょうか?時間は、どの程度、必要になるのでしょうか?

 以下では、労働者が会社に対して残業代を請求する場合の手続の流れを述べます。

2 証拠の収集・保全

 まず、証拠の収集・保全を考えます。タイムカードや勤怠表等、事案に応じて、証拠を収集・保全する必要があります。

 その理由としては、主に、以下の2点あります。

 1点目に、会社に対して残業代を請求する際に、残業の時間を主張する必要がありますが、証拠があった方が、ない場合よりも、法的な主張の検討や、残業代の算定を行い易いからです。

 2点目に、証拠がないと、会社が残業の有無、程度を争ってきた場合、労働者が残業していた事実を証明できない可能性もあります。労働者が残業していた事実を証明できない場合、裁判では、労働者の主張が認められません。

 したがって、まずは、証拠の収集・保全を考えます。

 証拠の収集・保全に要する期間はケースバイケースですが、証拠の収集・保全は重要な段階ですので、必要な限り、時間をかけることがあります。

 場合によっては、証拠保全という、裁判所の手続上での証拠の保全を検討・実施することもあります。証拠保全の場合、申立から実施まで、概ね2か月程度から、それ以上(数か月)になることもあります。

 なお、残業代を請求する権利の時効を止める必要がある場合、併せて、時効を止めることも検討します。

3 労働実態の把握・法的主張の検討・残業代の算定

 証拠等の資料等から、労働実態を把握し、法的な主張を検討し、残業代を算定します。

4 会社に対する残業代の請求の手段

 まず、会社に対する残業代の請求の手段としては、交渉が考えられます。

 交渉は話し合いであり、期限の定めはありませんので(時効を除きます。)、交渉に要する期間はケースバイケースです。少なくとも、1、2週間で解決することは少なく、数か月要することもあります。事案によっては、交渉を経ずに、裁判の手続で、会社に対して残業代を請求することもあります。

 交渉以外の手段としては、裁判の手続が考えられます。

 裁判の手続としては、訴訟(通常の裁判手続)や労働審判等が考えられます。

 裁判の手続は、労働者の希望内容、会社の対応や、法的手続の具体的な見通し等を考慮して、選択します。

 裁判の手続に要する期間については事案によりますが、訴訟(通常の裁判手続)の場合には(一回目の)判決に至るまでに9ヶ月から1年ほど、労働審判の場合には審判に至るまでに3ヶ月前後を要します。

5 さいごに

 労働者が会社に対して残業代の請求をする場合、会社内での昇進ができなくなる等の事実上の不利益が生ずる可能性も否定できません。

 他方で、残業代は、労働者が会社から受けられる正当な補償です(「残業代請求等における割増賃金について」参照)。

 会社に対する残業代の請求は、当事務所へご相談ください。お問い合わせは、「お問い合わせフォーム」からお願いいたします。